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2024
12/27

生命保険と特別受益の関係とは?相続時の取り扱いと高額なケースにおける遺産分割時の持ち戻しなどを解説

生命保険金は受取人固有の財産となり相続財産には含まれません。また、原則として特別受益にも該当しません。ただし、例外的な場面では、特別受益の対象となる可能性があります。相続における生命保険の処理について、誤解している人も多く、相続時にトラブルになるケースも珍しくありません。

生命保険と特別受益のある相続は、遺産分割協議が複雑になる恐れがあります。トラブルを避けるためには、相続時の生命保険の取り扱いを理解しておくようにしましょう。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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この記事の監修 :
弁護士 山村真登

相続における生命保険の取り扱いは複雑です。時には弁護士や他の士業でも勘違いをしていることもあるため、注意が必要です。
生命保険は原則として相続財産には含まれませんが、相続対策などで生命保険を利用しているケースでは、その保険金額が遺産に比して高額になっている場合もあります。このような場合には特別受益として主張して不公平を是正できる可能性があります。
被相続人に生命保険契約がある場合は、相続財産に含まれないと早計に判断するのではなく、その契約内容や保険金額等を把握した上で弁護士に相談する必要があるといえます。

この記事の監修 :
弁護士 山村真登

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相続の弁護士費用相場コラム

生命保険金は相続財産?遺産分割の対象になるの?

生命保険金は原則として、相続財産ではなく、遺産分割の対象となりません。
相続時に生命保険金が発生しているケースでも、相続財産と分けて考えます。

生命保険金は遺産分割協議の対象にならない

生命保険金は被相続人から受取人に支払われるのではなく、保険契約に基づいて保険会社から支払われるお金です。
つまり「受取人固有の財産」と考えられているため、遺産分割の対象となりません。
相続時には生命保険金以外の相続財産を相続人で分割し、さらに、受取人は生命保険金を受け取れます。
たとえ受取人が相続放棄しても、生命保険金を受け取れます。
 
なお、生命保険は大きく「終身保険」「養老保険」「定期保険」の3種類に分かれています。いずれの種類であっても死亡により支払われる死亡保険金であれば、相続財産として扱われることはありません。
ただし、養老保険の満期保険金や貯蓄性のある生命保険の解約返戻金は、契約内容によっては相続財産になる可能性があるので注意が必要です。
 

終身保険:契約期間に終了のない保険で一生涯の死亡が保障される
養老保険:一定期間内に死亡したら死亡保険金、期間終了時に生存していたら満期保険金が支払われる
定期保険:一定期間内に死亡したら死亡保険金が支払われ基本的に満期保険金はない

生命保険金が相続財産にならないケース・なるケース

生命保険金は、契約時に契約者・被保険者・受取人の3つの役割が決められます。被相続人と相続人が上記の3つのどれに該当するかによって、相続財産となるかどうかが決まるのです。
生命保険金は、誰が契約し、誰を保険の対象とし、誰が受け取るのかによって、相続財産になる場合とならない場合があります。
 

契約者:保険の契約者、基本的に保険料を支払う人
被保険者:保険の対象となる人
受取人:保険金を受け取る人

 

相続財産にならないケース

契約者:被相続人または相続人
被保険者:被相続人
受取人:相続人

 

夫が契約者となり、自身を被保険者とした生命保険で、妻を受取人に指定した場合、この生命保険金は相続財産にはなりません。これは、生命保険金が契約に基づき受取人に直接支払われるためです。
また、妻が契約者と受取人となり、夫を被保険者とした場合も、夫の死亡によって支払われる生命保険金は相続財産となりません。
生命保険金が相続財産に含まれるかどうかは、契約者、被保険者、受取人の関係によって異なります。生命保険金は高額になる場合が多いため、相続発生前に確認しておきましょう。

相続財産になるケース

一方、「契約者・被保険者・受取人が被相続人」または「被相続人が契約者だけど被保険者でない」生命保険金は相続財産に含まれるので注意が必要です。
貯蓄性のある生命保険金・養老保険の満期保険金が支払われる保険では、受取人が被相続人であるケースも珍しくありません。
保険金は被相続人に支払われているため、被相続人の財産となり、それを相続する形となるのです。
 
また、被相続人が被保険者でないケースでは、被保険者は死亡していないので生命保険金は支払われません。
しかし、相続人が保険を引き継ぎ、請求すれば解約返戻金を受け取れるため、請求権が相続財産とみなされるのです。
生命保険金が相続財産に含まれるかどうかは、契約内容によって異なります。契約内容を確認し、判断に迷う場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

生命保険金は相続税の対象にはなる

生命保険金は遺産分割の対象ではありませんが、相続税の対象という点には注意が必要です。
「契約者・被保険者が被相続人」である生命保険金は、受取人固有の財産とはいえ被相続人の死亡により支払われるお金でもあります。
実質的な相続財産ともいえるため「みなし相続財産」として扱われ、相続税の対象となるのです。
 
ただし、生命保険金には「500万円×法定相続人の人数」という非課税枠が設けられています。
さらに、非課税枠を超えた部分と他の相続財産の合計が基礎控除以下であれば、相続税は発生しません。
このように生命保険金は相続税の節税にも有効という側面もあるため、しばしば相続税対策として用いられているのです。

特別受益とは?生命保険金との関係性は?

生命保険金は、一般的に相続財産とは別物として扱われ、遺産分割の対象にはなりません。
生命保険は、契約に基づき保険会社が受取人に直接支払うものであり、被相続人の遺産とは異なるからです。たとえ相続発生時に生命保険金が発生していても、遺産分割とは別に考える必要があります。
しかし、上述した通り、契約者・被保険者・受取人のすべてが被相続人である場合や、被相続人が契約者で被保険者が別人の場合は、相続財産に含まれる可能性があります。

特別受益とは

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から生前贈与や遺贈、死因贈与によって、他の相続人よりも特別に利益を受けている場合を指します。
生前贈与は、婚姻、養子縁組、または生計の資本のいずれかを目的とした場合に限り、特別受益とみなされるのです。
もし特別受益を考慮せずに遺産分割を行うと、生前に多額の贈与を受けている相続人が、さらに相続財産も取得することになり、不公平が生じる可能性があります。
 
そこで、民法には「特別受益の持ち戻し」という制度が設けられており、特別受益を相続財産に加算して相続分を計算し直し、相続人間の実質的な公平を図るのです。
例えば、相続人が2人で、相続財産が2,000万円、一方が1,000万円の特別受益を受けている場合、特別受益の持ち戻しにより、合計3,000万円を2人で分割します。
この結果、1人あたりの相続分は1,500万円となり、既に1,000万円を受け取っている相続人は、残りの500万円のみを相続します。

生命保険金は原則、特別受益にあたらない

生命保険金は、生前贈与でも遺贈・死因贈与にも該当しません。
よって、相続人が受け取った生命保険金は原則として特別受益には当たらないのです。
しかし、生命保険金は一部のケースで特別受益になる恐れがあるため、注意しなければなりません。

生命保険金が特別受益になるケース

生命保険金が特別受益になる可能性があるのが「保険金額があまりに高額」なケースです。
生命保険金が他の相続財産に比較して高額になるケースでは、受取人と他の相続人との間に不公平が生じかねません。
そのため、相続財産と比較して高額な生命保険金は特別受益として、持ち戻して遺産分割する場合があるのです。
 
ただし、生命保険金が特別受益に該当するかどうかの明確な基準がある訳ではなく、以下の要素を踏まえて、事案ごとの状況を踏まえて裁判所の判断によって決められます。
一律の基準がある訳ではないですが、「保険金の額の遺産の総額に対する比率」が最も重要な要素となります。保険金額が遺産総額の50%を超えるような状況が一つの目安にはなるでしょう。保険金額がこれに近い状況であれば、特段の事情の有無を検討しても良いかと思います。

生命保険金が特別受益に該当するか不安を感じるようであれば、弁護士に相談するとよいでしょう。

<生命保険金が特別受益に該当した判例>
被相続人が契約者・被保険者で相続人の1人を受取人とするよう養老保険の死亡保険金請求権は遺贈・贈与には当たらないが、保険金の額・遺産の総額に対する比率・相続人や他の被相続人との関係性・各相続人の生活実態を考慮し民法903条の趣旨に反する「特段の事情が存する」と評価され、特別受益と認められています。

参考:最高裁判所「 平成16年10月29日判決」

生命保険金の受取人が相続人以外の場合

一般的に生命保険金の受取人は「配偶者または2親等以内の血族」と規定されているケースが多く、保険契約によっては上記以外の受取人に指定できるケースも珍しくありません。
そのため、相続人以外でも受取人になれます。

相続人以外が受け取る生命保険金も受取人固有の財産

相続人以外が生命保険金を受け取る代表的なケースは、次の通りです。どのようなケースであっても受取人として指定されている人が受け取る生命保険金は受取人固有の財産と考えられ、相続財産には含まれません。
遺産分割の対象とはならないため、相続人以外であっても受け取れます。
 

・孫を受取人にする
・内縁関係の配偶者
・若いうちに生命保険契約を結び受取人を親や兄弟姉妹にし、その後結婚したが変更していない

相続人以外の受取人は非課税枠が適用されない

相続人以外であっても生命保険金を受け取れますが、受け取った生命保険金は相続税の対象です。
生命保険金を含め相続財産が基礎控除を超えたら、相続人以外の受取人も受け取った額に応じて相続税の支払いが必要になります。
 
また、前述した生命保険金の非課税枠が利用できるのは法定相続人のみであり、相続人以外が受け取ると非課税枠が適用されません。
受け取った全額が相続税の対象となるため、相続税の負担が増える可能性がある点には注意しましょう。

さらに、生命保険金は「相続税の2割加算」の対象となるため、孫を指定する際には気を付けなければなりません。

遺留分と生命保険金の関係について

遺留分とは、相続人の生活を守るために法律で定められた、一定の相続人が最低限相続できる財産の割合を指します。

生命保険金は原則遺留分の対象にはならない

生命保険金は、原則として遺留分の対象にはなりません。遺留分を計算する際は、生命保険金を除いた相続財産のみを基に行います。

遺留分の対象になる場合

しかし、例外もあります。生命保険金が相続財産に比べて著しく高額で、相続人間の公平性を欠くような場合には、上記判例に照らして、遺留分の対象となる可能性があるのです。また、契約者・被保険者・受取人のすべてが被相続人である生命保険金は、そもそも相続財産の対象となるため、遺留分にも含まれます。
遺留分は、相続における重要な権利です。ご自身の状況に合わせて、専門家へ相談するなどして、適切な対応を取りましょう。

生命保険金の判断に悩む場合は弁護士に相談しよう

受取人を特定の相続人にしていれば、その相続人は生命保険金を受け取れます。一方で、「相続人と指定」するケースでは相続財産とはみなされませんが保険金を法定相続割合で分割します。
また、受取人を指定していない・被相続人よりも先に受取人が死亡し受取人を変更していないケースでは、保険契約規定に基づいて受取人が指定されるのが一般的です。
生命保険金は契約者・被保険者・受取人の指定によって、取り扱いが異なってきます。
 
さらに、特別受益や遺留分にも関わってくるため、慎重な対応が必要です。
相続税対策として生命保険金を検討している、相続時に高額な生命保険金があるといったケースでは、対応も複雑になる恐れがあるので専門家に相談し、スムーズな相続を目指しましょう。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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