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2025
01/11

相続における寄与分の計算方法や具体例を紹介 。 必要な準備やトラブルを避けるための対策と併せて解説

相続時に寄与分を認めてもらうには、認められる具体例や金額の計算を押さえたうえで主張する必要があります。被相続人の介護に一人で長年携わっていた場合、寄与分を請求できる可能性がありますが、寄与分はただ主張しても容易には認められません。「特別の寄与」が必要となります。寄与分が認められる具体的なケースや認められないケース・寄与分の計算方法を確認しておきましょう。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

以前、寄与分に関するコラムをご紹介しましたが、今回は、寄与の類型ごとに具体例をご紹介します。
寄与を認めてもらうのは容易ではありません。生前より、寄与分の制度を正しく理解して、証拠資料を残しておくことが重要となります。また、相続が既に発生してしまった方も、寄与の制度を理解し、様々な資料を準備してから弁護士に相談するようにしましょう。

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弁護士 山村真登

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相続の弁護士費用相場コラム

なぜ寄与分は相続で重要なのか。寄与分が認められる要件

寄与分とは、被相続人の財産の増加・維持に特別な貢献をした相続人が、他の相続人よりも多く遺産を受け取れる制度です。
被相続人を介護していたり、無償で家業を手伝っていたりすると寄与分が認められ、貢献度に応じて相続財産を増額できる可能性があります。
寄与分は遺産分割協議で相続人全員が合意すれば認められますが、合意を得られない場合は家庭裁判所への申し立てが必要です。
ただし、寄与分が認められるには、以下の要件を満たさなければなりません。

 

〈寄与分を認めてもらうための要件〉
・相続人である
・被相続人の財産の維持・増加に貢献している
・特別な寄与である
・一定期間以上の寄与である
・被相続人から対価を受け取っていない
・被相続人にとって必要不可欠な寄与である
・被相続人の生前中の寄与である
・片手間ではなく寄与に専念していた

寄与分が認められるハードルは高い

寄与分が発生すると他の相続人が相続できる財産が減少し、相続権を脅かしかねません。
容易に認めてしまうと相続で不公平が生じるため、寄与分が認められるハードルは高いのです。
そのため、どのようなケースで認められるかの理解が大切です。
なお、寄与分が認められるのは相続人に限られます。
たとえば相続人の配偶者などの相続人以外が行った貢献では寄与分が認められませんが、場合によっては親族であれば特別寄与料の請求が可能となります。

 

寄与分が認められにくい理由や要件について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

関連記事:寄与分とは?主張を検討している方向けに要件や時効など認められないケースと計算方法をわかりやすく解説

寄与分が認められる典型的なケース

寄与分が認められる典型的なケースは、以下の5つの行為に該当する寄与です。
それぞれ寄与の行為内容や計算方法が異なるので、注意しましょう。

 

〈寄与分の5つの分類〉
・療養看護型:被相続人の療養看護(介護)
・家事従事型:家業の手伝い
・金銭等出資型:被相続人への金銭などの給付
・扶養型:被相続人を扶養
・財産管理型:被相続人の財産の管理

典型例別の具体的な行為例

寄与分が認められるには「特別な寄与」つまり、通常期待される以上の寄与が要件となってきます。
分類ごとの概要と、具体的な行為例をみていきましょう。

療養看護型

療養看護(介護)型とは、被相続人を介護療養した場合で認められる寄与分です。
寄与分としては多くの方がイメージする種類ですが、通常の介護の範囲であれば認められません。
通常の範囲を超えた寄与かどうかが重要になり、たとえば、仕事を辞めて数年間24時間一人で介護をしたといったケースで認められます。

 

〈寄与分が認められた判例:東京高裁平成22年9月13日判決〉
相続人の妻が被相続人の介護をしていたケースでは、「13年の長期に渡る介護」「家政婦などを雇うのが相当とされる状況下での介護」であることから妻の寄与分が認められています。
なお、当時は特別寄与料がありませんでしたが、相続人である夫の代行者として夫の寄与分として認められています。

家事従事型

家事従事型とは、被相続人の家業や事業を手伝うケースです。
無償性や継続性・被相続人の財産の増加への貢献度が重視され、たとえば、それまでの仕事を辞めて無償で家業を長期間手伝ったケースで認められる可能性があります。
反対に、給与をもらって手伝っているケースでは認められないでしょう。

 

〈寄与分が認められた判例:東京高裁平成元年12月28日判決〉
被相続人の長男が中学卒業後から農業の後継者として従事、さらに長男の妻は長男死亡後も被相続人と同居し農業に従事したケースでは、財産の増加・維持に寄与したと認められています。
この事例では、夫婦の子どもに長男の代襲相続人として寄与分が認められています。

金銭等出資型

金銭等出資型とは、被相続人のために金銭等の出資をしたケースで認められる寄与分です。
被相続人の借金の立て替えや家の購入費用の援助・老人ホームの費用の援助で認められる可能性があります。

なお、被相続人の会社への出資は、被相続人ではなく会社への貢献となるため認められないので注意が必要です。
ただし、被相続人が個人事業主であれば家事従事型として認められる可能性もあります。

 

〈寄与分が認められた判例:和歌山家庭裁判所昭和59年1月25日判決〉
被相続人の財産のうち宅地・居宅は、購入時に配偶者と相談し名義は被相続人としつつ費用は配偶者の収入から9割相当が提供されていたケース。
このケースでは妻の出資分を財産への寄与と認め、宅地・居宅の評価額に対し寄与分を認めています。

扶養型

扶養型とは、被相続人の生活の面倒を見るといった経済的・身体的な扶養で認められます。
被相続人と同居して長期間面倒を見た、毎月の生活費を送金し続けたといったケースで認められる可能性があるでしょう。
ただし、親族には扶養の義務があるため、通常の扶養義務の範囲では寄与分は認められません。

 

〈寄与分が認められた判例:東京高裁平成22年9月19日判決〉
相続人が15年間給与の全額を被相続人の家計に入れ、財産を管理していたケース。
このケースでは、被相続人の行為を特別な寄与と認め、家計に入れていた分から相続人の生活費などを除いた分を寄与分としました。

財産管理型

財産管理型とは、被相続人の財産を適切に管理し財産の維持増加に貢献した場合に認められます。
被相続人の不動産を管理していた・財産を管理し散財を防いだといったケースで認められる可能性があります。

 

〈寄与分が認められた判例:長崎家諫早出審昭和62年9月1日判決〉
被相続人の不動産の売却時に、相続人が売却手続きや取り壊し、登記手続き、立ち退き交渉などを行ったケース。
このケースでは相続人の行為が売却額の増加に一役買ったとされ、寄与分が認められています。

典型例別の寄与分の計算方法

寄与分は、遺産分割協議の際に主張し、相続員全員の合意を得られれば認められます。
とはいえ、「介護したから100万円」と曖昧な基準で主張しても認められないでしょう。
ある程度根拠のある金額の提示により、他の相続人も認めやすくなります。
また、家庭裁判所で寄与分が決まる場合は、貢献度をケースによって個別に算出しています。

ただし、おおよその目安となる計算方法があるので、まずは自分のケースに当てはめて計算してみるとよいでしょう。

以下では、寄与分の種類別の計算方法を紹介します。

療養看護型

療養看護型では、本来プロに頼んでいたらいくらになったかを算出します。
裁量的割合とは、個別のケースごとの調整として用いられる割合です。
状況に応じて異なりますが、0.5~0.8で設定されるケースが多いでしょう。

 

〈計算方法〉
寄与分=療養看護の報酬相当額(日当)× 療養介護日数 × 裁量的割合

家事従事型

家事従事型では、正当に給与を得ていたらいくらになるかを計算します。
なお、同居により相続人の生活費が軽減されている場合はその分を控除したうえで計算します。

 

〈計算方法〉
寄与分=本来貰えるはずの年間給与額 ×(1 - 生活費控除割合)× 寄与年数

金銭等出資型

金銭等出資型は、実際に被相続人にいくら出資したかによって判断されます。

 

〈計算方法〉
寄与分(金銭贈与)=贈与した金額 × 貨幣価値変動率 × 裁量的割合
寄与分(不動産贈与)=相続開始時の不動産評価額 × 裁量的割合

扶養型

扶養型はいくら扶養で負担したかで計算します。
法定相続分とは、民法で規定されている相続できる財産の割合です。
相続人の関係性によっても異なりますが、仮に相続人が配偶者と子どもであれば、それぞれ1/2ずつとなります。

 

〈計算方法〉
寄与分=負担した扶養の額 × 期間 ×(1 - 寄与相続人の法定相続分割合)

財産管理型

財産管理型は、相続人が管理を行わず第三者に委託した場合にかかったであろう金額を基準に計算します。
ただし、上記の計算方法はあくまで目安であり、実際は個々の事情に応じて計算されます。
自分のケースに合わせた詳しい額が知りたい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

 

〈計算方法〉
寄与分=第三者に委任した場合の報酬額 × 裁量的割合

寄与分が認められないケース

寄与分は、通常期待される程度の寄与では、認められません。
療養看護型であれば、毎日の病院への送り迎え・介護士などプロへの依頼もしつつ行った介護は通常の範囲であり、認められないでしょう。
家事従事型なら、給与をもらいながら家業を行っていたケースではなかなか認められません。「身内でも普通はそこまでできない」レベルの寄与でなければ、認められないと考えておきましょう。

 

また、被相続人が「寄与を必要としていた」かも重要となり、寄与の必要性がないのに行う寄与では認められない点にも、注意が必要です。
たとえば、被相続人に生活能力が十分あるのに扶養していた、不動産の管理を管理会社が行っているのに掃除や手入れをしていたといったケースでは、寄与する必要性がないため寄与分は認められません。

寄与分を主張するために必要な準備、トラブルを避けるための対策

寄与分は認められる要件のハードルが高いだけでなく、認めてもらうための資料が提出しにくい点もネックとなります。
相続人や裁判所で寄与分を認めてもらうには、診断書や領収書などの客観的に寄与がわかる証拠が必要です。
要件を満たせない・証拠が十分でない状態で寄与を主張しても認められないだけなく相続人同士でトラブルになりかねません。
寄与は認められるハードルが高く相続トラブルに発展しやすいため、主張を検討する際には弁護士への相談をおすすめします。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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