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2024
07/25

不動産の共有を避ける遺産分割の方法とは?現物分割・換価分割・代償分割における注意点などを解説

不動産の共有を避けるために、相続発生時に遺産分割の方法を十分に検討し、安易に法定相続分で共有しないようにすべきです。共有には大きな問題点があり、よく考え話し合ってからでないと、将来取り返しのつかない状況になるリスクもあると、ご存じでしょうか。
遺産分割には、現物分割・換価分割・代償分割の方法があります。具体例やメリット・デメリット・注意点などを解説しますので、適宜の方法を選択し、不動産の共有状態が生じないようにしましょう。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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この記事の監修 :
弁護士 山村真登

遺産を単純に共有名義とすることをおすすめしていないことは『不動産を共有で相続するのはなるべく避けたほうがいい!』の記事にて紹介致しました。ただ、かといってどのような方法が適切かはケースバイケースとなりますので、以下の記事では、それぞれの方法の主なメリットやデメリットをご紹介します。

京都では、2024年1月に地価公示が3年連続で上昇したことが報道されました。京都市内を中心にホテルやオフィスの需要が高まったことが要因とされています。大阪府内でも住宅地については3年連続、商業地も2年連続で上昇しているのです。

このような関西圏における地価上昇も遺産分割の方法にも影響を及ぼしております。
不動産を売却することのメリットが大きくなり、私どものお客様でも、売却に向けた一定のルールや方針を協議し、換価分割を検討することが比較的多くなってきているように感じます。
他方、事業用資産である場合や居住している不動産である場合等代償分割とする他ないケースでは代償金の負担が益々大きくなっています。このような事例では、代償金の負担をできるだけ低くするための根拠を考えたり、資金捻出のための策を検討させてもらうこともあります。

豊富な実績と経験がございますので、是非一度ご相談下さい。

この記事の監修 :
弁護士 山村真登

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

不動産の共有を避けるため、遺産の分割方法を検討しよう

相続が発生し遺言書がない場合は、相続人全員の話し合いで遺産を分割し、遺産である不動産の所有者を決定していく必要があります。
遺産に価値の高い不動産があると、相続人間で公平な分割の実現のために、面倒を避けたい気持ちから共有する結論に傾きがちです。
しかし、実は不動産の共有はハイリスク。できるだけ共有を避けるために、もっとよい遺産分割の方法がないか、労を惜しまず検討すべきでしょう。

共有を避けるべき理由である不動産共有の問題点とは

不動産の共有で生じる主に3つの問題をご紹介しましょう。
【1】合意の難しさ 【2】権利関係の複雑化 【3】意図しない第三者が当事者となるリスクです。

【1】合意が難しく、重要な意思決定がしづらくなる

売却の場面、大きなリフォームの場面、賃貸に出す場面などの重要な意志決定の際に、共有者全員の合意が必要な点が問題となります。
契約相手、代金・賃料などの決定について、全員の合意を得るには想像以上の手間がかかるからです。
例えば、共有者が親子であれば、親が譲歩してくれるかもしれません。
しかし、共有者が兄弟姉妹で結婚している場合には、それぞれの家庭の意向が出てくる場合も…すると、意見の合意が難しい状況におちいるケースもあるのです。
また、意思決定の難しさから不動産が放置され、管理費用などで揉めるリスクもよく散見されます。

【2】時間経過と共に権利関係が複雑になり、収拾がつかなくなりやすい

共有状態が続くと、共有者の一人が亡くなって、相続によりその子どもや兄弟など、新しい人が権利を引き継ぎます。
関係性の薄い親戚が共有者となったり、持分をさらに複数の人が相続する決定がなされ、共有者の数が増えたりするケースが多いのに、全員の合意がないと重要な意思決定はできないのは変わりません。
共有のまま何十年も時間が経ち、連絡がつかずに生存しているかも分からない共有者が増え、収拾がつかなくなるケースは珍しくないのです。

【3】共有者が勝手に持分を売却する可能性がある

不動産の共有者は、不動産全体を勝手に売ることはできませんが、持分のみであれば(例えば2分の1ずつ共有している場合に自分が持っている2分の1部分のみであれば)他の共有者に無断で勝手に売却できます。
つまり、性質のよくない不動産業者や、全く面識のない第三者が共有者として関与してくる可能性があるのです。
業者から持分の買取や不動産の売却をしつこく迫られたり、以前にも増して意思決定の合意に苦労したりするリスクはなるべく避けたいところです。

速やかに遺産分割を行い、共有を避ける方法を検討しよう

上に挙げた理由以外にも、共有は将来取り返しがつかない状況を招くリスクがあります。
不動産の共有を避けるには、相続の開始後なるべく早く遺産分割協議(※)を行い、不動産を共有としない決定をするのが大切です。
共有で相続した後の共有物分割もできなくはないのです。しかし、手間や費用を考えると遺産分割の段階で共有となる事態を避けたほうがいいでしょう。
共有を割ける方法として「不動産を売って現金化して分割する方法」や、「一人が不動産を受け取って代わりに代償金を払う方法」などがあります。専門家の意見を聞きながら、不動産の共有を防ぐ遺産分割方法を検討してみましょう。
遺産分割の方法・様態として、大きく分けて3つあるので、ひとつひとつ詳しく解説していきます。

 

※遺産分割協議とは
相続が発生した際に法定相続人(民法が定める被相続人の財産を相続できる人)の全員で遺産の分け方を話し合い、誰が相続するか決定することを、遺産分割協議といいます。

現物分割(遺産をそのままの性質で分ける方法)の解説と注意点

「不動産は相続人甲が相続し、預貯金は相続人乙が相続する」「不動産Aは相続人甲が相続し、不動産Bは相続人乙が相続する」といったように、遺産現物をそのまま形状や性質を変えずに相続する方法が現物分割です。

現物分割の選択が適しているケースとメリット・デメリット

現物分割は手間がかからず、手続きもわかりやすいため、原則的な分割方法と言えます。
価値のある遺産が複数あって公平に分割しやすい場合や、他の相続人の理解を得て相続人の1人が不動産を相続して住み続ける場合などに選択されやすいでしょう。
例えば、相続人が厳密に公平な分割までは望んでおらず、多少の価値の高低は問題にしないケースでは、特定の遺産を相続人の一人が単独で相続する方向で合意しやすく、現物分割で不動産の共有は避けられます。
現物分割では不動産の精密な評価額の決定が不要な場合が多いので、評価方法でトラブルが生じにくいのもメリットです。
ただし、遺産の価値の大部分をひとつの不動産が占める場合など、共有を避けての現物分割では相続人間の公平を保つのが難しいケースがある点がデメリットと言えるでしょう。

遺産分割の際に土地を分筆して単有とする方法もある

一筆の土地を物理的にいくつかの土地に分け、分けた土地を単有(単独で所有すること)とする場合も、現物分割の一種です。
不動産の権利関係は登記簿で管理されており、登記簿において土地は一筆、二筆と「筆」で数を数えるため、土地の分割は「分筆」と呼ばれます。
土地を分割し、第三者に権利者の変更を主張するには、分筆して登記しなければいけません。
測量や登記費用をどうするか、分筆により土地の価値が下がらないかを考慮する必要がありますが、不動産を共有を避ける手法のひとつとなります。
なお、建物は区分所有が可能な共同住宅などの例外を除き、原則として分割できません。

換価分割(遺産を売って売却金を分配する方法)の解説と注意点

例えば「不動産を売って、売却代金を法定相続分の割合で各相続人に分配する」場合のように、分割が難しい不動産を売り、得られた売却代金を相続人間で分配する方法を換価分割と言います。

換価分割の選択が適しているケースとメリット・デメリット

換価分割は、遺産である不動産を相続人のいずれも利用する予定がない場合には、不動産の共有を避ける有効な方法となるでしょう。
相続税の納税資金が不足する際に、分配代金を利用できるのもメリットです。
デメリットとしては、売り急ぎで売却金額が低くなってしまうリスクや、場合によっては相続税の他に譲渡所得税の負担を考える必要のある点が挙げられます。
また、小規模宅地等の特例(一定の要件を満たす場合に、宅地の相続で大幅に相続税の減額が可能となる特例)を利用するために、相続開始時から相続税の申告期限まで土地を所有するべきケースがある点にも注意すべきです。

 

※譲渡所得とは
所有する資産を譲渡する際に発生する所得(儲け)を、譲渡所得といいます。
不動産を売却する際に、取得費(不動産の購入代金など)と譲渡費用(譲渡の際に支出した仲介手数料や登記費用など)の合計よりも収入(売買代金)が多いケースでは、所得が発生するのです。

換価分割が想定通りに進まない場合もある

「売って現金化して分配」と言うと簡単に聞こえます。ですが、いくつかの点について具体的に決めておかないと、換価分割がうまくいかずにトラブルになる場合がある点に注意が必要です。また、一般的に、相続人の誰かが居住する、または利用する財産については換価分割が難しい場合が多いでしょう。

 

【1】売却の前提としての相続登記の際に誰を名義人とするか(共有名義にするか、共有名義にすると後の手続きが大変になるので相続人代表者の単独名義にするか)
※売却をする際には、登記簿の所有者を亡くなった方から権利を引き継いだ人に名義を変更しておき、その方が売買契約において当事者(売主)となる必要があります。「法定相続分での共有で登記し、相続人全員が売買契約をする」「相続人の一人の単有で登記し、その代表者のみが売買契約をする」どちらかを選択するのが一般的です。
【2】名義人となった相続人による不動産の売却手続をどうするか
【3】売買代金の分配手続をどうするか

 

上記について詳細を確認したうえで、不動産が予定通りに売れない場合・希望金額で売れない場合など、うまく手続きが進まないケースを想定し、事前に話し合っておく必要があるでしょう。

具体的に決めておくべき点や注意すべき点

単独名義にして手続きを進める場合には、売買代金の分配が贈与とみなされないよう、遺産分割協議書には換価分割である点と、各相続人が取得する売却代金の割合を明記する必要があるのです。
また、売却代金から控除できる費用(不動産業者の仲介手数料・境界確定や測量の費用・登記費用・不動産の換価に時間を要する場合の管理費用)や分配金の清算方法について決めておくと、将来のトラブルに対策できるでしょう。
換価分割は、専門家の力を借りながら、遺産分割協議書の条項を細かく定めておくメリットが大きい場面です。

代償分割(特定の相続人が遺産現物を取得し代償金を支払う方法)の解説と注意点

典型例として、「遺産が不動産のみで相続人が甲乙二人の際に、甲が不動産を相続し代償として乙に不動産評価額の2分の1の金銭を渡す」場合が代償分割です。
特定の相続人が遺産現物を相続する代わりに、他の相続人に相続分に応じた金銭等を支払って、公平な分割を実現できる方法になっています。

代償分割の選択が適しているケースとメリット・デメリット

例えば、相続人に不動産を利用したい方がいるケースや、代々所有する土地を売却で手放したくないケースでも、共有を避けながら公平に分割できます。
注意点として、代償金の支払いが贈与とみなされないよう、遺産分割協議書には代償金の支払いについて明記しましょう。
代償分割は、資産として不動産を残しつつ、共有を避けながら公平な分割を実現するのに有効な方法ですが、次に挙げる問題点をクリアする必要があります。

代償金の支払いが難しいかどうか

不動産を取得する相続人が代償金を用意できるかどうかは、協議が成立する重要なポイントとなります。
高額な不動産だと、相当の資力がないと代償金の支払いは難しいケースも多いのです。
他の相続人が分割払いを認めてくれる場合には、支払い方法・分割回数・期限について遺産分割協議書に明記しましょう。

不動産の評価額の決定の合意が難しい

代償金による公平な分割を実現するには、不動産の価格を厳密に評価する必要があります。しかし、不動産の評価方法は多種多様で、時価(実勢価格)を基準とする場合、路線価(国税庁が相続税・贈与税の算定のために毎年発表する価格)を基準とする場合、固定資産税評価額(市町村が固定資産税の算定のために発表する価格)を基準とする場合などがあり、一義的には定まりません。
時価を基準にするとしても、各不動産会社の査定金額が一致しない場合もあります。
不動産の評価金額及び代償金額は、相続人の合意で設定可能ですが、合意が非常に難しい点が問題です。

換価分割や代償分割をお考えの際は、専門家にぜひご相談ください

上記に挙げた3つの方法のうち、現物分割が容易であれば、不動産の共有は避けやすいでしょう。他の相続人の理解が得られ、遺産である不動産に住む(住み続ける)予定の相続人の単独所有とするケースは、実際によく見られます。
しかし一般的には、遺産を法定相続分の割合の通りになるべく公平に分けたい要望が他の相続人から出るケースも多いのです。そこで不動産の共有を避けるには、現物分割以外の方法を選択しなければならない状況もあるでしょう。
換価分割や代償分割を選択する際は、遺産分割協議書の記載方法、不動産価格の決定方法など、注意すべき点が数多くあります。
不動産の共有を避けるために、換価分割や代償分割をお考えの際は、一度法律の専門家である弁護士に相談してみるのがおすすめです。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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