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2024
08/23

遺産の使い込みに気づいたら、どう対処する?一般的に必要な調査や裁判所手続き、時効などの注意点を解説

遺産の使い込みは、相続における深刻な問題です。刑事罰が科せられないだけでなく、民事上の責任を追及するための調査や証拠集めも容易ではありません。そのため、被害者は対応に苦慮するケースが少なくないのです。
遺産の使い込みに気づいた場合はどのような調査が必要か、話し合いがまとまらない場合の裁判手続き、そして時効など、注意すべき点について解説します。この記事を読む、あなたにとって適切な対応策を考える上での一助となれば幸いです。
また、遺産の使い込み問題に適切に対処するためには、専門的な知識が不可欠です。ひとりで悩まず、早めに弁護士にご相談ください。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

遺産の使い込みや使途不明金の問題が発覚すると、これが原因で、相続人間の信頼関係は失われてしまい、感情的な話し合いになってしまうこともあります。しかしながら、法的紛争に発展してしまった場合には、証拠の確保と整理が重要となります。相続に精通した弁護士のアドバイスを求めつつ、冷静に対応するようにしましょう。

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弁護士 山村真登

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

遺産の使い込み・相続の使途不明金問題とは

遺産の使い込みは、亡くなった方の財産を管理していた相続人が、勝手にその財産を使ってしまう行為です。とくに、お金に関する問題は「使途不明金」として、相続において深刻な問題となっています。誰にでも起こりうる問題について、具体的な事例と対応方法を分かりやすく解説します。遺産の使い込みに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

遺産の使い込みが疑われる事例・よくある事例

遺産の使い込みが疑われるケースは、日常的に起こり得る身近な問題です。例えば、故人の生活費としては明らかに多額すぎる出金や、本人が行動できそうにない時期に行われた預金引き出しなどが挙げられます。
下記に挙げた事例に心当たりがある場合は、専門家への相談も視野に入れ、慎重に状況を調査することをおすすめします。

 

<使い込みが疑われるよくある事例>
・生活費としては多額すぎる、不自然な出金が見られる
・本人が行動したとは思えない時期に預貯金が引き出されていたり、不動産や株などの資産が売却されている
・生命保険が解約されている、受取人の変更がなされている

遺産の使い込みが起きる背景と事情

遺産の使い込みは、介護や世話などで苦労した親族が見返りとして、多めの財産を受け取ろうとするケースが少なくありません。また、親族の財産管理を任された立場を利用して、つい横領してしまうケースもよく見られます。
少額の使い込みであれば、他の親族に気づかれずに済む場合も多いでしょう。しかし、高額な使い込みや、遺産全体から見た割合が大きい場合は、相続人間の激しい争いに発展する可能性も高まります。
使い込み行為は、窃盗や横領に該当する犯罪行為ですが、近親者間の窃盗や横領は、刑法上、処罰されないケースがほとんどです。そのため、被害者は民事裁判で責任を追求し、不当に失われた財産を取り戻すしかありません。

税務調査や税金面と遺産の使い込みの関係

相続に関する争いでは、課税上の問題を指摘し、公平な結論を認めるように相手方を説得する手法が有効です。
遺産の使い込みは、相続税の税務調査によって発覚する可能性があります。使い込みや使途不明金があると、相続税申告に疑問が生じ、税務調査を受けるリスクが高まるのです。
さらに税務調査では、相続財産のすべてが正確に申告されているか厳しくチェックされます。もし、使い込みがあったと判明すれば、相続税の申告漏れとして追徴課税を受ける可能性があり、場合によってはペナルティも科せられる場合があるでしょう。
また、使い込みを「生前贈与」と主張するケースも考えられます。しかし、高額な贈与税がかかる可能性を指摘すれば、相手を説得できる場合があるのです。使い込みを認め、遺産に加算すれば贈与税を回避できるメリットを説明し、より公平な解決を目指ざせる可能性があります。

遺産の使い込みが疑われる場合に必要な調査と証拠集め

遺産の使い込みが疑われる場合、まずは具体的な証拠集めが重要です。遺産がどのように使われたのか正確に把握するには、様々な角度からの調査が必要となります。
とくに、不自然な財産処分に関する証拠は、話し合いを進める上での重要な根拠となります。話し合いで任意返還を求める場合、具体的な証拠に基づいて、相手方に事実を認識させ、返還に応じてもらう方法が効果的です。
どのような証拠を集めるべきか具体的な方法については、弁護士などの専門家に相談も検討しましょう。

話し合いを有利に進めるため相続人自身で可能な必要な証拠集め

遺産の使い込み問題で、相手が「自分は無関係だ」「被相続人のために使った」などと主張する場合、話し合いを有利に進めるためには、具体的な証拠が必要です。
相続に関する調査は、相続人自身でも一定の範囲で行えます。
例えば、「被相続人が認知症であった」「身体的に動けなかった」といった、本人が自ら財産処分を行えなかった状態を示す医療機関の診断書や介護記録などが有効な証拠となります。また、相手が不正に財産を処分したことを示す銀行取引履歴や、贈与を受けた形跡がないことを示す贈与に関する証拠なども重要です。
証拠を揃えることで、相手方の主張の矛盾点を指摘し、裁判においても有利な立場を築けるでしょう。

 

<よくある遺産の使い込みが疑われる相手方の主張事例>
・被相続人本人による行為であり、自分は関与していないと主張
・自分が財産を処分をした事実はあるが、生活費など被相続人のために使ったと主張
・被相続人から生前贈与を受けたと主張

資産処分状況の調査が有効

遺産の使い込みが疑われる場合、預貯金や資産の移動状況の調査が重要です。
具体的には、不自然な高額の出金や、亡くなった後の預金引き出しができる銀行の取引履歴、過去の発振込伝票や払戻請求書の原本・筆跡、不動産や株式の契約書などを探して、証拠として保管しましょう。
遺産の使い込みの事実確認や、話し合いと裁判での有利な材料となります。

被相続人の状況の調査が有効

生前の使い込みが疑われる場合、被相続人の状態を客観的に示す証拠も重要な要素です。
医療機関のカルテや診断書、介護記録などは、被相続人の身体状況や認知機能が、財産処分を行える状態であったのかを判断する上で欠かせません。
例えば、診断書に認知症などの状況が記載されていれば、被相続人が自分の意思で財産処分を行うことが困難であったと示す有力な証拠となります。
また、介護記録に「日常生活全般において介助が必要」といった記載があれば、被相続人が一人で銀行に行ったり、不動産の売買契約を結ぶのは難しい裏付けになるでしょう。
被相続人の意思に反して財産が処分されたという証拠を揃えて事実を裏付け、話し合いや裁判において有利な立場となります。

証拠集めに有効的に利用したい「弁護士会照会制度」

相続に関する調査は例えば、金融機関の取引履歴や、被相続人の医療・介護記録などは、必要な手続きを踏めば、相続人自身で入手できるケースが多いでしょう。
しかし、調査すべき範囲が広い場合や、専門的な知識が必要な場合は、弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士は、弁護士会照会制度という仕組みを利用すれば、金融機関や行政機関に対して広範囲な調査を行えるのです。また依頼主は、取得した情報について法的な観点から適切なアドバイスを受けられます。
さらに裁判に発展する可能性がある場合、裁判所に職権調査の依頼も検討しましょう。この方法では、遺産以外の相続人に関する財産まで調査できるため、新たな事実を発見できる可能性があるのです。

使い込まれた遺産を取り戻すための話し合いと裁判所手続き

実際に財産を取り戻すには、話し合いにより任意に返還してもらうのが一番です。
しかし、話し合いや交渉が不調となれば、訴訟などの手続きに踏み切る必要があるでしょう。

遺産の使い込みを話し合いと交渉により解決するために

遺産の使い込み問題に直面した際は、まずは話し合いによる解決を目指しましょう。
話し合いがまとまれば、時間や費用を節約できるだけでなく、関係性の悪化を防ぎながらの解決が目指せます。
相手方の言い分を丁寧に聞きながら、冷静に状況を説明し、使い込んだ財産の返還を求めましょう。しかし話し合いに応じない場合は、法的手段も辞さないと伝え、相手を説得する必要が生じるかもしれません。
遺産分割協議では、使い込んだ相続人の取り分を減らすなどの調整により、解決に繋がる可能性もあります。また、相手方が使い込みを否定する場合は、具体的な証拠の提出を求め、冷静な議論を進めましょう。

感情的になりがちな場面では、弁護士に代理人として話し合いに参加してもらう方法も有効です。弁護士は、法的な観点から客観的なアドバイスを行い、円満な解決をサポートしてくれます。

裁判所手続きは話し合いが不調の場合に必要となる

話し合いがまとまらない場合、裁判所の手続きが必要になる場合があります。具体的には、「不当利得返還請求訴訟」や「不法行為に基づく損害賠償請求訴訟」による解決をはかるのが一般的です。

 

・不当利得返還請求訴訟
相手が法的な根拠なく財産を得ている場合に、その返還を求める訴訟。
・不法行為に基づく損害賠償請求訴訟
相手方の違法な行為によって損害を受けた場合に、その賠償を求める訴訟

 

近年、相続法が改正され、相続開始後に財産を使い込んだ場合、他の相続人の同意があれば、その財産を遺産とみなせるようになり、遺産分割協議の中で解決可能となるケースが増えたのです。そのため、「遺産分割調停」や「遺産分割審判」といった手続きで、より柔軟な解決が可能になったケースもあります。
ただ、いずれの手続きにおいても、法律に関する専門的な知識が必要となり、弁護士の手を借りずに遂行するのは困難です。適切なアドバイスを受けながら進めることを強くおすすめします。

遺産を取り戻すために訴訟を起こす場合の注意点

遺産を取り戻すための訴訟は、時効の経過や相手方の財産状況など、注意すべき点がいくつかあります。
まず、請求権には時効があり、期間を過ぎると権利を行使できなくなるため、早めに手続きを開始する必要があります。
また、勝訴しても相手方に支払い能力がなければ、実益がありません。訴訟前に相手方の財産状況を調査し、必要であれば保全措置を取る検討も大切です。
さらに、裁判では証拠が非常に重要です。契約書や領収書などの証拠をしっかりと集め、弁護士に相談しながら、適切な手続きを進める必要があります。

時効にはとくに注意

遺産の使い込み問題で訴訟を検討する際は、時効を必ず意識しましょう。
不当利得返還請求は、使い込みが発覚してから10年、あるいは相続開始から5年で時効になる可能性があります。
また、不法行為による損害賠償請求は、使い込みが発覚してから3年で時効を迎えるケースが一般的です。
相続開始から5年という期間は、思っているよりも早く過ぎてしまいます。権利を行使できる期間が限られているため、責任を追求するには早めに行動しなければならないと心に留めておきましょう。

相手方の財産状況に注意

裁判で勝訴しても、相手方に取り戻せる財産がなければ意味がありません。
遺産の使い込み問題では、生活に困窮し、親の財産を使い込んでしまったために、差し押さえ可能な財産がほとんど残っていないケースが少なくないのです。訴訟を起こす前に、相手方の財産状況を調査し、強制執行できる財産があるかの確認も大切です。
もし、相手が財産を隠したり、浪費する恐れがある場合は、訴訟と同時に保全手続きを取ることも検討しましょう。

専門的知見が必要な遺産の使い込み問題は「早めの弁護士相談」が解決への近道

遺産の使い込み問題は、法律の知識が深く要求される複雑な問題です。そのため、一人で悩まず、早めに弁護士に相談することが最善策です。
訴訟を起こすかどうか、どのような方法で解決を目指すかなど、様々な選択肢があります。弁護士は、個々のケースに合った最適な解決策を提案し、手続きをサポートしてくれます。例えば、証拠が十分に揃っているか、勝訴の見込みはあるか、訴訟費用はどれくらいかかるかなど、専門的な視点から具体的なアドバイスを受けることができます。また、遺産分割協議の中で解決できるのか、別途訴訟を起こす必要があるのかといった判断も、弁護士の経験と知識が不可欠です。得られる経済的利益に差が出る可能性もあるでしょう。
遺産の使い込みが発覚したら、まずは弁護士に相談し、適切なアドバイスから解決への近道を模索してください。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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