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2024
10/21

遺産の使い込みを防ぎたい!証拠を残すには?親族間でコミュニケーションをとり各種契約の利用検討を

高齢化社会において、親の財産を子どもが管理する機会が増え、遺産の使い込みが懸念されています。相続後に財産を取り戻すのは決して容易ではないため、事前の対策が重要です。
家族間で財産の状況や今後の計画について話し合い、信頼関係を築くことが第一歩です。また、万が一の場合に備え、財産に関する記録をきちんと残しておきましょう。
遺言の作成や信託契約の利用、財産管理に関係する各種契約や後見制度の活用など、法的な手段も検討できます。これらの制度は、ご自身の状況に合わせて専門家にご相談の上、適切な選択が大切です。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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この記事の監修 :
弁護士 山村真登

遺産で揉めたくない!と皆様思われていると思います。しかし、相続人による遺産の使い込みなどが発覚した場合には揉めたくなくとも揉めてしまうこともあります。そのような紛争にならないよう、やはり生前から家族でコミュニケーションをとり、生前に対策をとっていくことが必要となります。特に事業を営まれていたり、相続財産に収益不動産があることによって被相続人の預貯金口座に多額の入出金があるような場合は、注意が必要です。
このようなことで揉めないための法律上の方策をご紹介します。

この記事の監修 :
弁護士 山村真登

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

遺産の使い込みが社会問題化する背景。なぜ使い込みが起きてしまうのか?

高齢化が進み、親の財産を子どもが管理する機会が増加する中、一部の相続人による遺産の使い込みが社会問題化しています。高齢者が一人では生活が困難になり、同居の子どもに財産管理を任せるケースでは、とくに注意が必要です。
親の財産を管理する立場にある子どもが、その地位を利用して不正に財産を流用してしまうケースは実際にあります。たとえば、親の同意を得ずに勝手に預金を引き出したり、不動産を売却したりするといった行為が考えられます。このような事態を防ぐためには、事前の対策が不可欠です。

世話をする側は見返りを求める気持ちになりやすい

高齢者の財産管理において、世話をする側の親族が財産を不正に利用するケースは少なくありません。これは、世話をする側が長年の苦労に対する見返りを求める気持ちや、親族間の遠慮から、不正行為を見過ごしてしまうのが原因の一つです。
親族間の感情的な側面が絡むため、財産管理を巡るトラブルは複雑化しやすい傾向があります。そのため、財産管理を委任する場合は、あらかじめ報酬や範囲を明確にした契約を結ぶなど、法的対策を講じておくことが望ましいのです。

他人の財産管理を厳格に行うのは難しい

高齢者の財産管理を親族に委任する場合、不正利用のリスクが伴います。親族であっても、他人の財産を管理することは難しく、つい私的な流用をしてしまったり、管理がずさんになったりするケースもあります。
財産管理の実務では、不正を防ぐために、財産と私的な資産の明確な区分、定期的な報告、帳簿の作成、第三者によるチェックなどが一般的です。親族に財産管理を委任する場合も、同様の仕組みを導入することで、不正利用のリスクを軽減できます。

 

具体的には、委任契約書を作成し、管理内容や報告義務などの明記が重要です。また、定期的に親族に報告書を提出させ、必要に応じて専門家による財産状況の確認も有効な手段と言えるでしょう。

遺産の使い込みの解決策。証拠を残す意識と家族間のコミュニケーションがなぜ大切か?

高齢化社会において、相続を巡るトラブルは深刻化しています。とくに、遺産の使い込みは、発生後に解決が困難な問題として知られています。訴訟になれば、長期間にわたる争いや高額な費用がかかる可能性があり、精神的な負担も大きいでしょう。
事態が深刻化する前に防ぐには、被相続人が生前からの対策が不可欠です。財産に関する記録をしっかりと残し、家族間で財産の状況や今後の計画についての話し合いが重要です。
もしトラブルが発生した場合でも、証拠があればよりスムーズに解決できる可能性が高まります。

 

すでに使い込まれてしまった遺産を取り戻すための手段や必要な証拠収集、取り戻す際に生じがちな問題点についてはこちらの記事を参照してください。

 

関連記事:遺産の使い込みは何を証明すれば取り戻せる?争いになりやすい点や証明に必要な証拠の具体例を解説

【防止策1】証拠を残して将来に備える

同居の親族や、財産を管理する親族による使い込みが疑われる場合は、とにかく早い段階から使い込みを証明する証拠を残すようにしましょう。
たとえば、預金通帳やクレジットカードが本人以外によって使用されていた形跡、または、本人が財産処分を行えない状況下で、第三者が財産を処分していた事実を示す証拠などが挙げられます。医療機関や介護施設の記録も、本人の意思能力や身体状況を証明する重要な証拠となり得ます。医療機関の記録や介護記録は保存期間が短い可能性があるため、早めに入手して残すようにしましょう。

 

収集した証拠は将来、相続が発生した場合に、遺産の使い込みがあったと証明する上で、決定的な役割を果たします。訴訟に発展した場合、これらの証拠は裁判において有力な根拠となり、不正利用された財産を取り戻す可能性を高めるでしょう。

【防止策2】家族間でコミュニケーションをとって遺産管理の認識を深める

高齢者の財産管理において、家族間のコミュニケーションは、遺産の使い込みを防止する上で非常に重要です。
親の財産について、子どもたちが具体的な内容を把握していれば、不正な利用を早期に発見し、防止に繋がります。相続や財産について家族で話し合う機会を設けましょう。とくに、親から直接情報を聞き出せる対話の場を作っていければ、将来のトラブルを防ぐための第一歩と言えるでしょう。
また、コミュニケーションを行うことで、親はより慎重に財産管理をして、遺言についての情報収集を検討するようになり、将来の公平な相続の実現に役立つ可能性もより大きくなります。

 

さらに、一部の相続人が財産を不正に利用している疑いがある場合は、その親族へ他人の財産を管理する責任の重大さを認識させ、正確な記録を残すよう促していく努力が大切です。
たとえば、管理をする一部の相続人に対し、他人の財産を厳格に管理した方が安心という認識を持ってもらうよう話をするとよいでしょう。さらに将来税務調査が入るかもしれないといった話をして、帳簿や記録をつけて正確に財産管理するよう勧め、領収書などのエビデンスを残すようにやんわりと伝えていくのも有効です。

亡くなる前に使い込みが発覚!そんな場合に取り戻すための対処法とは?

親が健在なうちに、一部の子どもによる遺産の使い込みが発覚した場合、法的措置は複雑で簡単ではありません。なぜなら、親がまだ存命である限り、財産は親の所有物であり、子どもは財産管理権を持っていません。基本的に、親自身が問題解決にあたるべきであり、子どもは直接介入しにくいのが現状なのです。
そのため、親が自ら弁護士に相談したり、家庭裁判所に調停を申し立てるなどの対応が必要となります。

【ステップ1】金融機関への報告や成年後見制度で更なる使い込み発生を防ぐ

親が健在で意思疎通が可能なら、金融機関に届け出を行って、不正な引き出しを防止できます。しかし、意思能力が低下している場合は、成年後見制度を利用したり、口座を凍結したりするなどの対応が必要となるでしょう。
具体的には、成年後見人を選任して口座の管理を委任したり、金融機関に連絡して口座の凍結を依頼したりといった方法が考えられます。状況に応じて、適切な手続きを進めることが重要です。

【ステップ2】証拠があれば本人からの訴訟で財産を取り戻す手段をとる

話し合いが難航し、親への財産返還が得られない場合、法的措置が検討されます。
親本人が使い込んだ子どもに対して、不当利得返還請求訴訟や不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を起こす手段があるのです。
ただし、これらの訴訟では、子どもが親の財産を無断で処分したという事実を証明する証拠が重要に。本人の許可なく子どもによる財産処分が行われた銀行の取引履歴や、財産処分に関する契約書などが、有力な証拠となり得ます。

【ステップ3】親の意思能力がない場合の訴訟は成年後見制度が必須となる

親が認知症などにより意思能力を失っている場合、たとえ勝訴の見込みが高くても、訴訟を起こすには成年後見制度の利用が不可欠です。
なぜなら、意思能力のない本人の代わりに訴訟行為を行うためには、法的な代理人である成年後見人の選任が必要となるからです。選任された成年後見人は本人の利益を代表して、訴訟の提起や進行を決定します。

遺産の使い込みを事前に防ぐために。財産管理に関する契約の締結などの手段の紹介

高齢者の財産管理において、遺産の使い込みを防ぐためには、契約の締結や成年後見制度の活用が有効です。
たとえば、財産管理委任契約を結ぶことで、信頼できる人に財産の管理を委託できます。また、成年後見制度を利用すれば、裁判所の判断に基づいて後見人が選任され、財産の管理が行われます。また、これらの契約を公正証書で作成すると、将来的に契約の有効性が争われるリスクを低減できます。公正証書は、公証人が作成に関与するため法的証拠力が高く、契約内容が明確にされているのです。

財産管理委任契約や信託契約を活用

財産管理を特定の親族へ委任する場合、財産管理委任契約の締結が有効です。財産管理は、信頼できる親族のほか、弁護士などの専門家に委任するのもおすすめです。
契約書には委任する財産の種類や範囲、受託者の業務内容などを明確に記載し、後々のトラブルを防止も期待できます。
ただし、全ての金融機関にて認めているわけではないですし、委託者を監督する人がいない場合、委任者が財産を私的に利用してしまうリスクも考えられ、財産管理委任契約は万能ではありません。

 

また、信託契約を結ぶのも有効な方法の一つです。
信託契約とは、財産を第三者の信頼できる者に委託し、財産を管理・処分する義務を負ってもらう契約です。委託者は、財産を直接管理する必要がないため、財産の不正利用のリスクを軽減できるでしょう。また、信託契約は法律に基づいた制度であり、専門家のサポートを受ければより安全な資産管理を実現できます。
財産管理は、単に財産を預けるだけでなく、将来の相続や贈与なども含めた包括的な計画が必要です。ご自身の状況に合わせて、弁護士などの専門家への相談もおすすめします。

任意後見契約の締結や成年後見制度の利用

任意後見契約とは、自分が認知症などで意思能力が低下してしまったケースに備え、あらかじめ財産管理を任せる後見人を指名しておく契約です。
任意後見契約を締結しておくと、将来認知症などで意思能力が低下した場合に、家庭裁判所への申し立てと任意後見監督人の選任を経て、任意後見人による財産管理が開始するので、適切な財産管理が期待できるでしょう。
弁護士などの専門家を任意後見人として指名しておけば、より安心です。

 

任意後見契約を結んでいない場合に認知症になってしまったケースでは、成年後見制度の利用を申し立てて家庭裁判所の審判を経れば、後見人による財産管理が開始されます。
後見人の就任や業務には家庭裁判所のチェックが入り、後見人は自由に財産処分できる立場にないので、本人の財産の流出や使い込みを防止できるでしょう。

公平な遺言書を残してもらうのも有効

親が公平な内容の遺言書を残すことは、相続におけるトラブル防止に非常に有効です。
生前贈与を理由に、特定の相続人が他の相続人よりも多くの財産を受け取るといった不公平が生じるケースを未然に防げるでしょう。
遺言書によって、各相続人の相続分を明確に定めておけば、相続開始後の争いを回避し、円滑な相続手続きへと繋げられるはずです。

遺産使い込みの予防に役立つ各種契約締結の際は専門家に相談しよう

財産管理委任契約、信託契約、任意後見契約といった契約は、遺産の使い込み防止に有効な手段です。しかし、これらの契約締結には、専門家費用や手続きの煩雑さといったデメリットも伴います。将来発生する可能性のある費用や問題点を十分に理解した上で、契約内容を決めていけめよう、対策を進めていきましょう
相続はケースバイケースであり、最適な手段は人それぞれです。弁護士などの専門家は、あなたの状況に合わせて、メリット・デメリットを詳しく説明し、最適な解決策を提案してくれます。遺産の使い込みが心配な方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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