遺言書で一人だけに全財産を相続させることは可能?
結論から言うと、遺言書に記載してあれば全財産を一人に相続できます。一人だけに相続をしたいと考えている方は、その旨を遺言書に記載しておけば相続はできるでしょう。しかし、一人にすべてを相続をするにあたって、いくつか注意すべき点があるのです。
よくある一人だけに相続させたいケースとしては、主に以下の4つが挙げられます。
各ケースごとの具体例について紹介しましょう。
・内縁の妻に全財産を相続させたい
・身寄りがないため全財産を第三者に譲りたい(いわゆる”遺贈”)
・経営者が自分の後継者に全財産を相続させたい
・夫婦間に子どもがいないため配偶者に全財産を相続させたい
【ケース1】内縁の妻に全財産を相続したい
前妻(死別)との間に一人娘がいるが、遠方に嫁いだためほとんど交流がない状態でした。現在は内縁の妻が献身的に自分の介護をしてくれている状態。
そのため、自分の全財産を内縁の妻に相続したいと考えている。
→遺言がない場合、内縁の妻には相続権がないため、遺産は交流がない娘へと相続されます。
【ケース2】身寄りがないため全財産を第三者に相続したい
具体例として、配偶者・子ども・親族がいないため、家族内に相続したい人がいない。
自分が保護猫活動に参加している経緯から、保護猫の世話を行っている団体に全財産を相続したいと考えている。
→遺言がない場合、財産が遠い親戚か国庫に帰属する可能性があります。
【ケース3】経営者が自分の後継者に全財産を相続したい
具体例として、経営者には複数の子どもがいるが、自分の後継者を長男にしたいと考えている。そのため、会社の株式・事業資産といった全財産を長男一人に相続したい希望がある。
→遺言がない場合、株式等の事業に必要な財産が子ども等の間で分散してしまう可能性があります。
【ケース4】夫婦間に子どもがいないため配偶者に全財産を相続したい
具体例として、夫婦二人家族であり自分たちの間には子どもがいないため、夫婦各々の全財産を配偶者に相続したと考えている。
→遺言がない場合、配偶者と自分の親戚が遺産分割協議をしなければならない可能性があります。
遺産を単独で相続させる遺言の法的根拠、利点と留意点
被相続人が遺言によって、自身の財産すべてを特定の相続人または第三者に相続させる場合について、法的根拠、メリット、そして注意すべき点を詳しく解説します。
遺産を単独で相続させる場合の法的根拠
遺産を単独で相続させる遺言の法的根拠は、民法第902条および民法第964条に規定されています。
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
引用:e-GOV法令検索 令和6年5月24日施行 民法
この条文により、被相続人は、民法第900条および第901条に定められた法定相続分に制約されることなく、遺言によって各共同相続人の相続する割合を自由に決定できます。
この相続分の指定に基づき、特定の相続人の相続分を100%とすることも法律上認められており、一般的に「相続させる旨の遺言」と呼ばれます。
さらに、民法第964条は遺贈について定めています。遺贈とは、遺言によって、受遺者(法定相続人を含む)に対して財産の全部または一部を包括的にまたは特定して贈与する行為です。この条文によって、遺言書に明記すれば、法定相続人ではない第三者に対しても自身の財産を譲ることが可能です。
参照:よくある質問 相続遺言/和歌山県行政書士会
:「相続させる」旨の遺言と遺贈の違い/札幌相続相談所
遺産を単独で相続させる場合のメリット
遺言書によって特定の相続人または第三者にすべての遺産を相続させる場合、主に以下の3つの利点が考えられます。
故人の意思を明確に反映できる(例:特定の人物、団体への遺贈)
特定の人物や団体への遺贈を通じて、故人の特別な思いや希望を確実に実現できます。例えば、生前世話になった方へ感謝の気持ちとして財産を残したり、社会貢献活動を行う団体へ寄付したりする意向を示す場合などに有効です。
相続手続きの簡素化(例:遺産分割協議が不要になるケースがある)
通常、複数の相続人がいる場合には遺産分割協議を行い、誰がどの財産を相続するかを決定する必要があります。しかし、一人にすべての遺産を相続させる旨の遺言書が存在する場合、原則として遺産分割協議が不要となり、相続手続きを迅速に進めることが期待できます
特定の財産を特定の人物に確実に承継できる(例:事業承継、不動産)
後継者に事業を承継させたい場合や、特定の子供に特定の不動産を確実に引き継がせたい場合など、特定の財産の承継先を明確にしたい場合に有効です。遺産分割によって当該財産が分散したり、意図しない人物に渡ったりするリスクを回避できます。
遺産を単独で相続させる際の注意点
遺産を単独で相続させる遺言は、故人の意思を明確に示し、相続手続きを簡略化する上で有効な手段です。
しかし、遺言書で特定の人物にすべての遺産を相続させる旨を記載する際には、以下の3つの点に留意する必要があります。
遺留分侵害のリスク
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された最低限の遺産取得割合です(民法第1042条)。
一人にすべての遺産を相続させる内容の遺言が、他の相続人の遺留分を侵害する場合、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるのです。遺言書を作成する際には、遺留分を考慮した内容とする必要があります。
他の相続人との関係悪化の可能性
遺言によって遺産を相続できなくなる他の法定相続人は、不公平感を抱き、遺産分割を巡って争いが生じるなど、親族関係が悪化するおそれがあります。
遺言書を作成するにあたっては、他の相続人の心情にも配慮した説明や、遺留分に配慮した財産配分を検討することが望ましいでしょう。
遺言書の不備による無効のリスク
遺言書は、民法で定められた厳格な方式に従って作成されなければ、効力が認められない場合があります(民法第960条)。
例えば、自筆証書遺言では、全文、日付、署名を遺言者本人が自筆で記載し、押印することが必須です。これらの要件を満たしていない場合、遺言が無効となる可能性もあるのです。遺言書を作成する際は、形式的な不備がないよう、専門家(弁護士や司法書士など)のアドバイスや確認が強く推奨されます。
遺産を一人へ相続する際に注意すべき遺留分侵害額請求と対策
遺産を特定の相続人へ単独で相続させる場合に注意すべき点はいくつかありますが、特に重要な遺留分の定義、遺留分侵害額請求、そしてその請求に対する有効な対策について詳しく解説していきましょう。
遺留分の定義とは
遺留分は、民法第1042条に定められた、被相続人の配偶者、子供、直系尊属(父母や祖父母)といった特定の法定相続人に保障される最低限の遺産取得割合です。兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
引用:e-GOV法令検索 令和6年5月24日施行 民法/デジタル庁
遺留分の割合
直系尊属のみが法定相続人のときは被相続人の全財産の1/3、配偶者・子どもが法定相続人のケースでは全財産の1/2が相続財産留保分となります。
ここで注意すべき点は、法定相続人のうち被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていない点です。
遺留分金額の計算例
例として、遺産総額5000万円、法定相続人が配偶者と子供1人のケースを考えます。
遺留分の割合は1/2となるため、遺留分総額は5000万円 × 1/2 = 2500万円です。
配偶者と子供の法定相続分はそれぞれ1/2であるため、各々の遺留分額は2500万円 × 1/2 = 1250万円となります。
例 | 遺留分金額 |
---|---|
・法定相続人:配偶者、子ども1人 ・法定相続分:5000万円 ・遺留分金額:2500万円 (被相続人の法定相続分全財産の1/2) |
・配偶者:1250万円(2500万円×1/2) ・子ども:1250万円(2500万円×1/2) |
遺留分侵害額請求とは
遺留分を侵害された相続人(配偶者、子供、直系尊属)は、遺贈を受けた人や他の相続人に対し、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。遺留分は自動的に確保されるわけではなく、権利者が自らその権利を行使する必要があります。
遺留分侵害額請求の手続きは、まず当事者間での話し合いから始まり、合意に至らない場合は家庭裁判所での調停、さらに調停が不成立となれば訴訟へと進みます。
遺留分侵害額請求権の消滅時効
遺留分侵害額請求権には消滅時効があるため注意が必要です。以下のいずれかの期間が経過すると、請求権は消滅します。時効にかかる前に権利を保全しておく必要があります。
・遺留分の侵害を知った時から1年間
・相続開始(被相続人の死亡)時から10年間、相続の発生および遺留分の侵害を知らなかった場合
遺留分請求が心配な場合の生前対策
遺産を特定の人に相続させる遺言を作ると、「遺留分」がある他の相続人から、遺留分相当額の金銭を請求される可能性があります。この請求をできるだけ避けるために、生前にできる対策をいくつかご紹介します。
生前贈与の活用
相続が始まる前に、自分の財産を少しずつ相続人に贈与する方法です。相続時の財産が減るので、遺留分の計算の元になる金額が小さくなります。ただし、相続が始まる10年以内の贈与は、後で遺留分の計算に入れられる場合があるので注意が必要です。
生命保険の活用
死亡保険金は、原則として相続財産とは見なされません。そのため、特定の相続人を保険金の受取人にしておくと、その人が受け取る保険金は遺留分の対象にならないのが原則です。ただし、保険金の額があまりに大きいと、特別受益として遺留分の計算に含まれる可能性があります。
養子縁組制度の活用
養子縁組を行い子供の数を増やすと、相続人全体の遺留分の割合は変わらないものの、一人当たりの遺留分が少なくなるため、請求される金額が減ることになります。法的に子が増えることになりますので、慎重に検討しましょう。
付言事項の活用
なぜ特定の人に財産を相続させるのか、他の相続人への配慮などを遺言書に書いておく方法です。法的な強制力はありませんが、説明や事情によっては他の相続人が納得してくれる可能性もあります。
遺留分に関する合意
生きているうちに、遺留分を持つ相続人と話し合い、遺留分を放棄してもらうことに合意する方法です。ただし、遺留分の放棄は家庭裁判所の許可が必要になるため、その可否については専門家に相談しましょう。
弁護士への相談
遺留分に関する対策は、法的な知識が不可欠であり、複雑な側面も多いため、専門家である弁護士に相談への検討が必要な場面です。弁護士は、個々の状況に応じた最適な対策を提案し、法的な手続きをサポートしてくれます。
一人に相続させる遺言書の書き方と注意点
自分の財産を特定の人(相続人やそれ以外の人)にすべて譲りたい場合、遺言書にどのように書けば良いのか、また、書く際にどんな点に注意すべきかを、公正証書遺言と自筆証書遺言の2つの種類に分けて、わかりやすくご説明します。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、遺言者が公証人と面談し、遺言の内容を伝えた上で、公証人がその内容に基づいて作成する遺言書です。作成された遺言書の内容に遺漏や誤りがないか遺言者と証人2名が確認し、署名・捺印を行うことで完成します。
公正証書遺言の最大のメリットは、公証人が法的な知識に基づいて作成するため、遺言が無効となるリスクが極めて低い点です。また、遺言書の原本は公証役場に保管されるため、紛失や親族による偽造・変造の心配がない点も大きなメリットです。一人に確実に相続させたいという意向がある場合には、公正証書遺言での作成を強く推奨します。ただし、公正証書遺言を作成するには、公証人への手数料が発生します。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付を自筆で書き、署名・押印した遺言書です。2019年の民法改正により、財産目録については、遺言書本文とは別にパソコンで作成したり、通帳のコピーなどを添付したりすることが認められるようになりました。ただし、財産目録のすべてのページに遺言者の署名・押印が必要です。
自筆証書遺言は、遺言者本人が手軽に作成できるというメリットがある一方、誤字脱字のリスクや、加除訂正を行う際には法律で定められた方式に従う必要があるなど、注意すべき点があります。修正箇所を遺言者が指示し、変更した旨を付記して署名し、さらに変更箇所に押印が必要です。
また、自筆証書遺言は、原則として遺言者自身で保管するため、紛失や偽造のリスクがありました。しかし、2020年7月10日からは、自筆証書遺言を法務局で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が始まり、これらのリスクを軽減できるようになりました。この制度を利用して、遺言書の紛失や偽造のリスクを回避しつつ、自筆証書遺言のメリットを活かせるのです。
一人に相続させる遺言書の書き方
公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらの形式で遺言書を作成する場合でも、必ず記載すべき重要な項目が2つあります。
相続人・受遺者を特定する
1つ目は、財産を相続させる人(相続人)または遺贈する人(受遺者)を特定するための情報です。これには、その人物の氏名、生年月日、そして被相続人との続柄を正確に記載する必要があります。例えば、「長男〇〇令和元年5月1日生」のように明記します。
相続・遺贈する財産を特定する
2つ目は、相続または遺贈する財産を特定するための情報です。不動産であれば、登記簿謄本に記載された所在、地番、地目、地積、家屋番号などを詳細に記述します。預貯金の場合は、金融機関名、支店名、口座の種類と番号を記載します。株式などの有価証券であれば、証券会社名、口座番号、銘柄、株数を明記します。このように、誰に何を相続させるのかを具体的に示すことが重要です。相続人は必ずしも遺産の全貌を知っている訳でもないので、財産を列挙しておくのが良いでしょう。
なお、「全財産を相続させる」というように、包括的に記載しても有効です。
よりスムーズな相続のために推奨される記載事項
法律上必須ではありませんが、遺言書に記載しておくと相続手続きがより円滑に進むと考えられる項目が2つあります。
遺言執行者の指定
1つ目は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う遺言執行者の指定です。遺言執行者には、信頼できる親族や、弁護士・司法書士などの専門家を指定することが一般的です。遺言執行者を指定しておけば、相続開始後の煩雑な手続きをスムーズに進められるでしょう。
付言事項の記載
2つ目は、付言事項の記載です。遺言者の気持ちや、特定の相続人に財産を相続させる理由、他の相続人への感謝の言葉などを自由に記述するものです。付言事項には法的な拘束力はありませんが、相続人間の感情的な対立を和らげ、遺言者の意図を伝える上で重要な役割を果たします。
とくに、遺産を一人に相続させる遺言書を作成する際には、他の相続人への配慮などを付言事項として丁寧に記述することが望ましいでしょう。情報を適切に盛り込んでおけば、遺言者の意思がより明確に伝わり、相続手続きにおける無用な混乱を防ぐことに繋がります。
遺言書が無効となるケース
遺言書遺言書を作成しても、以下のいずれかに当てはまる場合、効力が認められず、無効となってしまう可能性があります。
単独相続の遺言書を作成する際は、無効となるケースを十分に理解し、法的な要件を満たした正確な遺言書を作成することが非常に重要です。
不安な場合は、弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
書き方のルールを守っていない
法律で定められた遺言書の形式(例えば、自筆証書遺言であれば全文自筆であること、作成年月日や署名・押印があることなど)を満たしていない場合、遺言書は無効になります。公正証書遺言であれば、証人2名の立ち会いが必要です。
遺言を書いた人に判断能力がない
遺言を作成する時点で、遺言者が15歳未満である場合や、認知症などで自分の行為の意味を理解する能力(遺言能力)が不十分な状態(例えば重度の認知症など)で作成された遺言書は無効となります。
遺言の内容がハッキリしない
どの財産を誰に相続させるのかが曖昧で、遺言書の記載だけでは具体的に判断できない場合、遺言は無効になることがあります。単独相続の場合、「〇〇に全ての財産を相続させる」と明確に記載することが重要です。
遺言の内容が社会のルールに反する
社会的な倫理観や道徳、常識から大きく逸脱した内容の遺言書は無効とされます。例えば、犯罪行為を指示するような内容などが該当します。
弁護士に相談するメリット
遺言書を作成するにあたっては、弁護士へ相談すると良いでしょう。理由としては、以下の3つのメリットがあるためです。
・遺言書の形式、内容のチェック→遺言書が無効となるリスクを回避できる。
・遺留分対策のアドバイス→遺産を一人が相続する際に生じる遺留分対策について助言がもらえる。
・その他相続トラブルの予防→相続紛争に精通した弁護士が法律上のリスク要因を分析してくれる。
参照:遺言書作成・遺言信託を弁護士に依頼した方がいい?メリットを紹介/虎ノ門法律経済事務所
一人相続でも相続税の基礎控除は使える?計算方法と注意点
遺産を一人に相続させる場合でも、相続税の計算において基礎控除は適用されます。相続税は、亡くなった方から引き継いだ財産の総額が、基礎控除額を超える場合に課税される税金です。
以下の点に注意して、正確な相続税額を把握するようにしましょう。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
ここでは、相続税の基本的な計算方法と、単独相続の場合に特に注意すべき点について解説します。
相続税の計算ステップ
相続税額を算出する基本的な流れは3つのステップに分かれます。
まず、「課税遺産総額」を計算し、次に「相続税の総額」を算出し、最後に「各相続人の相続税額」を決定します。
【ステップ1】課税遺産総額の計算
課税遺産総額は、相続税の対象となる財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額です。
基礎控除額は、「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という計算式で求められます。
ここでいう法定相続人の数には、相続放棄をした人も含まれる点に注意が必要です。また、養子の法定相続人の数え方には制限があります。被相続人に実子がいる場合は養子は1人まで、実子がいない場合は養子は2人までが法定相続人に含まれます。
【ステップ2】相続税の総額の計算
課税遺産総額を、もし各法定相続人が民法で定められた法定相続分に従って取得したと仮定した場合の、各相続人の取得金額を計算します。
法定相続分は、配偶者と子供、配偶者と直系尊属、配偶者と兄弟姉妹といった相続人の組み合わせによって異なります。
算出した各法定相続人の取得金額に、超過累進税率(10%~55%)を乗じて、相続税の総額の基となる税額を計算し、それらを合計したものが相続税の総額となります。
【ステップ3】各相続人の相続税額の計算
最終的に、相続税の総額を、実際に財産を取得した各人の課税価格に応じて按分し、それぞれの納付すべき相続税額を計算します。
参照:相続税の計算/国税庁
:相続税の倍率/国税庁
単独相続でも確認が必要!相続税計算時の注意点
たとえ遺産を一人に相続させる場合でも、相続税の計算では以下の点に注意が必要です。
基礎控除額を超えるかどうか
相続する財産の合計額が、相続税の基礎控除額を超えるかどうかを確認しましょう。基礎控除額は、「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。
ここでいう法定相続人の数は、実際に遺産を相続する人数ではなく、配偶者や子供など、法律で定められた相続人の数を指します。したがって、遺産を一人に相続させる場合でも、基礎控除額の計算は法定相続人の数に基づいて行われます。
相続財産の評価方法
相続する財産の種類によって、その評価方法が異なります。例えば、土地や建物などの不動産、銀行の預貯金、株式などの有価証券では、評価額の計算方法がそれぞれ異なります。財産の評価を誤ると、相続税の額が変わってくる可能性があります。
生前贈与があった場合
亡くなった方が生前に相続人に対して財産を贈与していた場合、その贈与は相続税の計算に影響を与えることがあります。特に、相続開始前一定期間(原則として7年以内)に行われた贈与は、相続財産に加えて相続税が計算されることがあります。
遺言書によって遺産を一人に相続させたいなら弁護士に相談して円満な相続を
ご自身の想いを託し、遺産を特定の方に相続させる遺言書は、大切な意思表示です。しかし、遺留分という他の相続人の権利や、相続税といった考慮すべき点も存在します。
スムーズで円満な相続を実現するためには、法的な側面や税務に関する専門知識が不可欠です。遺言書の作成はもちろん、遺留分対策や相続税対策についても、弁護士や税理士といった専門家にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
専門家は、あなたの状況に合わせた最適な方法を提案し、安心した相続の実現をサポートします。