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2026
09/11

医学部学費や留学費用は特別受益になる?1000万円超の高額教育費における相続トラブルの賢い解決法

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医学部の学費や海外留学費用といった高額な教育費は、被相続人の資産・収入状況に照らして過大であったり、他の兄弟姉妹への援助との均衡を欠いたりする場合、特別受益に該当することがあります。特別受益に該当するか否かは、教育費の額だけを形式的に比較して判断されるものではなく、被相続人の資産・収入状況や、教育費が支出された当時の生活状況などの個別具体的な事情を考慮して判断されます。このような検討にあたっては、取引履歴や学歴の調査などの証拠収集に加え、収集した証拠に基づいて特別受益の該当性を主張立証することが重要となります。
特別受益を主張してご自身の相続分を守りたいときは、正当な相続分を確保するためにも、お早めに弁護士へご相談ください。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

学費に関する特別受益に関するご相談で、相談者の方が口にされるのは、金額のことだけではありません。特別受益の主張の背後には、何十年も心の中にしまってこられた思いがあります。

他方で、裁判所が見ているのは「その支出が、その家庭の資力に照らして扶養の範囲内だったか」だという点です。本文で紹介した裁判例のとおり、医学部の学費や長期留学の費用ですら、家庭の状況次第では特別受益にならないことがあります。「高額だから当然に取り戻せる」「兄弟で差があるからずるい」という直感だけでは、主張が認められない可能性があります。

だからこそ、まずは本コラムで紹介したような裁判所の考え方の枠組みを知っていただくことが、解決への第一歩になります。

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弁護士 山村真登

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

教育費は特別受益に含まれる?私立医学部や海外留学費用の基本的な考え方

高校進学や大学進学のための教育費は、原則として、特別受益にはあたりません。高校や大学への進学は、現代社会において一般的になっているところ、そのような教育費は、親が子に対して負う通常の扶養義務の範囲内のものと考えられているからです。
しかし、私立医学部進学や海外留学に伴う高額な教育費の拠出は、被相続人の資産や他の兄弟姉妹が受けた援助水準との均衡次第では、特別受益に該当する可能性があります。

一般的な高校や大学の学費は、親の扶養義務の範囲内

親には子に対する扶養義務があるため、公立・私立を問わず、通常の高校や大学へ進学する際の学費は、親が子に対して負う扶養義務の範囲内の支出と評価され、生計の資本としての贈与(特別受益)には当たらないことが多いでしょう。たとえ兄弟姉妹間で「自分は大学に進学させてもらえなかった」という不満や教育格差があっても、一般的な学費の範囲での支出であれば、遺産分割の調停や審判において、特別受益と認められることは難しいと思われます。

1000万円を超える私立医学部や海外留学費用の線引き

私立医学部や海外の大学院への留学費用といった、総額1,000万円を大きく超えるような高額な支出は、親の資産や他の兄弟姉妹への援助に照らして、突出しているケースがあります。兄弟姉妹間で偏りが著しい状況では、生計の資本としての贈与に該当し、特別受益と判断される可能性が高まります。特別受益に該当するか否かの判断には、具体的な金額や当時の家庭環境を詳細に検証する作業が欠かせません。
 
関連記事:遺産分割で生前贈与が特別受益となる典型例と否定例は?持ち戻しの免除などの注意点についても合わせて解説

兄弟間や親族間で争いになりやすい学費の裁判事例

相続人の間では、学費の援助の不平等を巡って、具体的な相続分の割合に関する激しい紛争へ発展することが珍しくありません。過去の裁判例から、学費が特別受益に該当するかどうかがどのように判断されているかを見ていきましょう。

兄弟間で学費の援助に差が生じた事例

親から援助してもらった学費について、兄弟姉妹間で差があることは、よく起こり得ることです。この場合、他の兄弟姉妹より多くの援助を受けた相続人に特別受益が認められるか否かは、当該学費の金額、親の資産・収入、社会的地位等の諸事情を総合的に考慮した上で、それが通常の扶養の範囲内かどうかによって判断されます。

そのため、形式的にみて他の相続人より多く学費を援助してもらっているからといって、直ちに特別受益に該当するわけではないことに注意が必要です。それぞれが受けた援助について、個別事情を検討するプロセスが欠かせません。

長男だけが私立医学部へ進学した事例

長男のみが医学部に進学した事案において、長男への多額の学費援助が特別受益に該当するかどうかが争われた判例があります(京都地判平成10年9月11日)。

この事案では、開業医である被相続人は、長男による家業の承継を強く希望していました。裁判所は、被相続人の資産や社会的地位に照らせば医学部の学費も扶養の範囲を超えるものではなく、被相続人の十分な資力により長男以外の子も大学教育を受けていたことから、不公平な偏りがあるとはいえないとして、特別受益への該当を否定しました。

親の資産状況により扶養義務の範囲と判断された

相続人のうち1人だけが、2年間の大学院の学費や10年に及ぶ海外留学の費用を負担してもらった事案において、これらの費用が特別受益に該当するかが争点となった判例もあります(名古屋高決令和元年5月17日・判例時報2445号35頁)。

この決定は、教育費については、被相続人の生前の資産状況や社会的地位に照らし、相続人に高等教育を受けさせることが扶養の一部と認められる場合には、特別受益には当たらないとの判断枠組みを示しました。
 
その上で、①被相続人一家は教育水準が高く、能力に応じて高度な教育を受けることが特別なことではなかったこと、②受益者が専門的な職業人として成長するために相当な時間と費用を要することを、被相続人自身が許容していたこと、③受益者は自発的に被相続人へ相当額を返還しており、被相続人が清算や返済を求めた形跡もないこと、④被相続人は経済的に余裕があり、他の相続人やその妻にも高額な品物や金銭を贈与していたこと、⑤他の相続人も大学に進学し、在学中に短期留学を経験していたこと、といった事情を挙げて、特別受益への該当を否定しました。
 
裁判所は、教育水準が高く経済的にも余裕のある家庭環境の下では、本人の能力に応じた高度な教育への支出も扶養の範囲内にとどまると評価したものと考えられます。

孫への援助や同居時の生活費の法的扱い

孫に対する学費の援助や、被相続人と同居していた期間の生活費については、被相続人との関係性や援助の金額・態様によって、特別受益に該当するかどうかが判断されます。

孫の学費は原則として対象外となる理由

子(孫の親)が存命である限り、孫は相続人とならないため、祖父母(被相続人)からの学費援助は、原則として特別受益にはなりません。ただし、孫の親が死亡するなどして孫が代襲相続人となった後に受けた贈与は、特別受益に該当し得ます。

また、孫の親(被代襲者)が被相続人から受けていた特別受益は、代襲相続により孫が引き継ぐと解されています。代襲相続人は、被代襲者が受けるはずであった相続分を取得する立場にあるためです。

学生時代の一人暮らしにおける仕送りや実家暮らしの生活費

「実家暮らしで生活費が浮いた」と他の相続人から主張されても、通常の同居生活の範囲内であれば、特別受益には該当しません。
 
過去の審判例には、約7年間にわたり毎月2万〜25万円の送金を受けていた事案について、遺産総額や被相続人の収入状況を考慮し、月10万円に満たない送金は親族間の扶養的な金銭援助にとどまるとしつつ、月10万円を超える送金は生計の資本としての贈与(特別受益)に当たると判断したものがあります(東京家審平成21年1月30日)。
 
しかしながら、この審判は、当該事案の遺産総額や被相続人の収入状況を踏まえて月10万円という線を引いたものにすぎず、「月10万円」が一般的な基準として確立しているわけではありません。したがって、10万円を超えれば常に特別受益に当たり、超えなければ当たらない、という単純な判断はできないことに注意が必要です。
 
生活費としての支払いが特別受益に該当するか否かは、金額だけでなく、相続財産の総額、被相続人の収入・資産状況、受益者の生活状況その他の事情を総合的に考慮して判断されます。すなわち、被相続人による生活費の援助が扶養義務の範囲内にとどまる場合には、原則として特別受益には当たりません。そのため、具体的な事案では、被相続人の資力等を踏まえ、どの程度の援助であれば扶養義務の範囲内といえるかが問題となります。

相手の過剰な主張へ反論し自身の正当な権利を守る手段

ご自身が学費等の援助を受けたことを理由に、他の相続人から具体的相続分を減らすよう主張されている場合、第一の反論は、そもそも当該援助が扶養義務の範囲内であり、特別受益(生計の資本としての贈与)に該当しないという主張です。ここまで紹介した裁判例は、まさにこの主張が認められた例といえます。
これに加えて、仮に特別受益に該当するとしても、持ち戻し免除の意思表示を主張することで、ご自身の利益を守ることが考えられます。
 
特別受益の持ち戻し免除とは、被相続人の意思表示により、特別受益に当たる贈与を相続財産に持ち戻さない(加算しない)ものとすることをいいます(民法903条3項)。受益者である相続人は、被相続人にこの免除の意思表示があったことを主張することになります。

 
相手の過剰な主張へ反論し自身の正当な権利を守る手段

持ち戻し免除の意思表示を活用する

持ち戻し免除の意思表示とは、特別受益に当たる贈与を遺産分割の計算上持ち戻さなくてよいとする、被相続人の意思表示をいいます。方式に定めはなく、明示のほか黙示によることも可能です。
 
仮に特別受益にあたるような高額な生前贈与であっても、被相続人に持ち戻し免除の意思表示があれば、当該贈与は遺産分割における相続財産(みなし相続財産)の算定から除外されます。もっとも、遺留分侵害額の算定においては、持ち戻し免除の意思表示があっても当該贈与は基礎財産に算入されるため、他の相続人の遺留分までは排除できない点に注意が必要です。
 
このとおり、持ち戻し免除の意思表示は贈与を受けた相続人の利益になりますので、これから贈与をお考えの方(将来の被相続人となる方)の立場では、後々の親族間トラブルを防ぐため、遺言書や贈与契約書に免除の意思を明記しておくことが望まれます。

書面が残されていない場合であっても、生前贈与の見返りとして被相続人の介護や看病に従事していた実績がある場合や、病気により独立した生計を営めない相続人の生活を支える目的の援助であった場合などには、当時の家庭環境や状況から、被相続人の免除の意思が黙示的に認められる可能性があります。

過去の支出や事実関係を示す客観的な証拠を集める

遺言書や贈与契約書に持ち戻し免除に関する記載がない場合に、黙示の持ち戻し免除の意思表示を認めてもらうことは容易ではありません。黙示の意思表示の有無は、個別の事案における諸事情を総合的に考慮し、被相続人が持ち戻しを免除する意思を有していたか否かを推認して判断されます。具体的には、贈与の経緯、被相続人の生活状況、被相続人と受益者との関係性その他の事情を踏まえて、被相続人の意思を認定することになります。
 
例えば、受益者が贈与を受ける一方で、被相続人の介護や看病に継続的に尽力していたなど、贈与と介護・看病との間に一定の関連性が認められる場合には、被相続人がそのような貢献を考慮して贈与をしたものとして、持ち戻し免除の意思が認められやすくなると考えられます。また、重い病気等により独立して生計を営むことが困難な相続人に対し、その生活を支援する目的で贈与がされた場合にも、当該贈与を遺産分割において持ち戻すことを予定していなかったとの被相続人の意思を推認させる有力な事情となり得ます。
 
これらの事情を裏付ける証拠としては、贈与当時の手紙や日記、預貯金口座の取引履歴・振込記録、介護の実態を示す記録などが考えられます。相続開始から時間が経つほどこうした資料は散逸していくため、早期に収集・保全に着手することが重要です。

 
関連記事:特別受益の持ち戻し免除とは?特別受益を主張されたときの対応や持ち戻し免除が認められるケースと注意点

法改正とデジタル化に伴う特別受益トラブルの最新動向

特別受益の主張に関する期間制限の新設や、近年のデジタル化に伴う記録調査の困難化を踏まえると、解決に向けた対応を後回しにすることには大きなリスクがあります。正当な相続分を確保するためにも、早めに動き出すことが重要です。

特別受益の主張には10年の期間制限が存在する

令和3年(2021年)の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続開始の時から10年を経過すると、原則として、特別受益や寄与分を考慮して具体的な相続分を定めることができなくなりました(民法904条の3)。

このような期間制限が設けられたのは、長期間放置された遺産分割では特別受益や寄与分に関する証拠が散逸してその認定が困難になるうえ、遺産分割が行われないまま相続が繰り返されると、遺産共有状態の解消が進まず、所有者不明土地の発生などの社会問題につながるためです。
 
相続開始から一定期間経過後は法定相続分を基準とした簡明な分割を可能とすることで、遺産分割の促進と法律関係の早期確定を図ることが、改正の趣旨とされています。ただし、10年の期間が経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求(調停・審判の申立て)をした場合や、期間満了前6か月以内に遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあり、その事由の消滅から6か月以内に請求した場合には、10年経過後も特別受益等を考慮した分割を求めることができます(同条ただし書)。また、相続人全員が合意すれば、10年経過後に特別受益を考慮した遺産分割を行うこと自体は可能です。
 
なお、この期間制限は施行日前に開始した相続にも適用されますが、経過措置により、相続開始時から10年を経過する時または施行時から5年を経過する時(令和10年3月31日)のいずれか遅い時までは、特別受益等の主張が可能です。

デジタル資産と電子化による過去の記録の追跡

ネット銀行の普及や通帳レス口座への移行に伴い、金融機関によっては、インターネットバンキングの画面上では直近2〜3年分の取引履歴しか閲覧できない場合があります。もっとも、金融機関に取引履歴の開示を請求すれば、請求時点から概ね10年分を遡って開示を受けられることが一般的です。

他方で、数十年前に行われた学費の振込みや仕送りの送金履歴を遡って追跡する作業は、年々困難になっています。個人による金融機関への調査には限界があるため、早期に専門家へ相談し、調査に着手することをお勧めします。

遺産相続で揉めたら山村忠夫弁護士事務所へご相談ください

相続問題では、本コラムで紹介した「特別受益」をはじめ、さまざまな法的知識が求められます。特に、被相続人が既に亡くなっている相続においては、過去に行われた金銭の授受について、本人から直接事情を確認することができません。そのため、相続人の主張を裏付けるには、客観的な証拠を収集することが重要になります。
 
もっとも、相続人ご自身で証拠を収集するには時間や労力がかかり、大きな負担となる場合があります。弁護士に依頼すれば、事案に応じて、弁護士が利用できる各種の証拠収集・開示の手段を活用し、相手方が任意に開示しない資料の収集を進めることも可能です。ご自身の正当な権利を守り、適切な形で相続問題を解決するためにも、早めに法律事務所へ相談することをおすすめします。

当事者同士の話し合いで生じるリスクと限界

当事者間の話し合いは、「長男だけずるい」「介護したのは私だ」といった直接的な感情のぶつかり合いを誘発しかねません。法的な根拠のない感情論での応酬は紛争の長期化を招きやすく、一度こじれた親族関係が修復困難な亀裂となって残ることもあります。親族との関係を悪化させることなく、円滑に相続手続を進めるためにも、専門家への相談をご検討ください。

妥当な解決は京都の山村忠夫弁護士事務所へ

京都で相続問題にお悩みのときは、山村忠夫法律事務所にご相談ください。これまで扱ってきた相続事件で得た経験と知識を駆使して、相談者の正当な権利を守るために尽力します。当事務所では、ウェブサイトのお問い合わせフォームやお電話から無料相談のご予約を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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