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2026
04/22

遺産を渡したくない推定相続人を外す相続廃除の条件とは?虐待や侮辱などの認定基準を判例を用いて解説

「暴力を振るう息子に遺産を渡したくない」「ギャンブルで家計を破綻させた親族を推定相続人から外したい」といった悩みに対しては、相続廃除により相続権を失わせる方法があります。もっとも、相続廃除は推定相続人の権利を重大に制限する制度であり、虐待・重大な侮辱・著しい非行といった法定事由が厳格に判断されます。本記事では、相続廃除の要件や判例上の認定基準、必要な証拠について解説します。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

相続廃除は、推定相続人の相続権そのものを失わせる極めて強力な制度である一方、裁判所による判断は厳格であり、感情的な対立のみでは認められません。虐待・侮辱・著しい非行に該当するかは、具体的事実と証拠に基づき慎重に評価されます。本記事では、判例を踏まえた実務的な判断基準と手続のポイントを整理しています。 京都の山村忠夫法律事務所では、相続廃除を含む複雑な相続案件に多数対応しており、ご本人の意思を最大限尊重した解決に向けてサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

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相続の弁護士費用相場コラム

特定の親族から相続権を剥奪する相続廃除とは

特定の親族との関係が悪化し、自分の財産を相続させたくないと考える方も少なくありません。そのような場合に利用される制度が相続廃除です。本項では、相続廃除の基本的な仕組みと、これと関連する制度について解説します。

相続廃除の定義と相続欠格との決定的違い

相続廃除とは、推定相続人において、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他著しい非行(例えば、犯罪行為やギャンブルによる著しい浪費など)が認められる場合に、被相続人の意思に基づき家庭裁判所に申立てを行い、その審判によって当該推定相続人の相続資格を失わせる制度です。
 
これと類似する制度として相続欠格があります。相続欠格は、被相続人の殺害や遺言書の偽造・変造など、法律で定められた重大な違法行為があった場合に、被相続人の意思とは無関係に、当然に相続資格を失わせる制度です。

両者の決定的な違いは、被相続人の意思の関与の有無にあります。すなわち、相続廃除は被相続人の明確な意思表示と家庭裁判所の審判を要するのに対し、相続欠格は客観的な事実の存在のみで当然に効果が生じます。

廃除の対象は遺留分を持つ相続人に限定される

相続廃除の対象となるのは、配偶者・子・直系尊属など、いわゆる遺留分を有する相続人に限られます。

これに対し、兄弟姉妹には遺留分が認められていないため、例えば遺言書において「全財産を特定の者に相続させる」と定めることで、兄弟姉妹を実質的に相続から排除することが可能です。この場合、あえて廃除の手続をとる必要はありません。

もっとも、配偶者・子・直系尊属といった遺留分権利者については、遺言によって相続分を与えない旨を定めたとしても、その者の相続人としての地位自体は失われません。そのため、遺留分侵害額請求を行う余地が残ります。
 
したがって、遺留分侵害額請求を含めて一切の相続関係を遮断したい場合には、相続廃除を行う必要があります。相続廃除は、特定の相続人に対して遺留分の権利も含めた相続権そのものを失わせる点において、極めて強力な制度といえます。

 
関連記事:公平な相続に役立つ遺留分と特別受益の比較と、両者が関係する場面を解説!財産の評価時点に注意しよう

廃除と代襲相続の関係

相続廃除の効果は、あくまで廃除された本人にのみ及ぶものであり、その者の子(被相続人の孫)にまで直接影響するものではありません。
そのため、廃除された推定相続人に子がいる場合には、当該子が代襲相続人として相続人となります。
 
例えば、「非行のある息子に財産を承継させたくない」と考えて相続廃除の手続きを行ったとしても、息子に子がいる場合には、その子(孫)を通じて結果的に当該家系に財産が承継される可能性が残ります。

相続廃除はあくまで特定の相続人の相続資格を失わせる制度にとどまり、同人の子らに対する承継自体を遮断するものではないことに注意が必要です。

 
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裁判所に相続廃除が認められる3つの条件

相続廃除が裁判所に認められるためには、法律上定められた3つの事由のいずれかに該当する必要があります。
もっとも、相続権の喪失という重大な法的効果を伴う手続であるため、単なる親族間の不和では足りず、信頼関係が回復困難な程度にまで破壊されていることを、客観的証拠に基づいて立証する必要があります。
裁判所で相続廃除が認められる条件は、3つのうちいずれかに該当することです。相続権の喪失という重大な結果を招く手続きであるため、親族間の信頼関係が修復不能なまでに破壊された状況を証拠に基づいて客観的に立証できなければなりません。

民法が定める虐待・侮辱・著しい非行

相続廃除は、民法892条に定める以下のいずれかの事由が認められる場合に限り、家庭裁判所の審判によって認められます。まずは、対象となる推定相続人の行為がこれらに該当するかを検討することが重要です。

 
<民法892条が定める廃除事由>

廃除事由 具体的な該当行為の例
被相続人に対する虐待 精神的または身体的に激しい苦痛を与える暴力や暴言
重大な侮辱 被相続人の名誉や人格を甚だしく損なう社会的評価を貶める言動
その他の著しい非行 多額の借財や浪費、重大な犯罪行為、不貞など

裁判所は信頼関係の破壊を慎重に判断する

相続廃除は、相続権そのものを剥奪する極めて強い効果を有する制度であるため、裁判所はその該当性を慎重に判断します。
そのため、単に被相続人が主観的に「許しがたい」と感じているだけでは足りず、客観的に見て、親族間の信頼関係が修復不能な程度にまで破壊されていると評価できる事実が必要とされます。
例えば、一時的な感情の高ぶりによる軽微な暴行や口論にとどまる場合には、通常、廃除が認められる可能性は低いと考えられます。

【判例紹介】実際に相続廃除が認められた3つの事例

過去の裁判例においては、推定相続人による多額の借財や浪費行為に加え、犯罪行為なども相続廃除の事由に該当すると判断されています。
また、当事務所の拠点である京都においても、相続廃除が認められた裁判例が存在します。以下では、これらの裁判例を取り上げ、具体的にどのような事情が廃除事由として評価されたのかを解説していきます。

 
【判例紹介】実際に相続廃除が認められた3つの事例

【大阪高決平成15年】財産浪費と敵対的訴訟が問題となった事例

長男は、父親から管理を任されていたマンション賃料等の収入を競馬につぎ込み、多額の財産を浪費しました。その結果、父親は自宅の売却を余儀なくされるに至りました。さらに、長男は父親が経営する会社の役員であったところ、これらの事情を理由に解任されると、これに対する報復として、虚偽の事実に基づく訴訟を提起するなどの敵対行為に及びました。
 
裁判所は、これら一連の行為について、単なる浪費にとどまらず、被相続人の生活基盤を脅かし、かつ敵対的行為によって関係を決定的に悪化させたものと評価し、「著しい非行」に該当すると認定しました。その上で、親子間の信頼関係は回復不能な程度にまで破壊されているとして、相続廃除を認めました。

【大阪高決令和元年】高齢の父に対する暴行が虐待と認定された事例

長男は、60歳を超える父親に対して少なくとも3回にわたり暴力を振るい、そのうち1回では全治3週間の入院を要する傷害を負わせました。

審判において長男側は、「父親の言動に原因があった」と主張しましたが、裁判所はこれを採用せず、暴力の程度の重大性および反復継続性を重視しました。そして、当該行為は被相続人に対する「虐待」に該当すると判断し、相続廃除を認めました。

【京都家審平成20年】繰り返される犯罪と金銭要求の事例

長男は窃盗罪による服役を繰り返し、その都度、父親が被害弁償や借金の補填として約400〜500万円もの金銭負担を余儀なくされていました。さらに、長男は相続廃除を受け入れることの見返りとして、多額の金銭の支払いを父親に要求するに至りました。

京都家庭裁判所は、これらの行為について、長期間にわたり被相続人に経済的・精神的負担を強い、さらには金銭要求にまで及んだ点を重視し、親子間の情愛を著しく損なう「著しい非行」に該当すると認定しました。その結果、相続廃除を認める判断がなされました。

相続廃除を行う2つの手続きと流れ

相続廃除には、被相続人が生前に自ら申し立てる「生前廃除」と、遺言によって廃除の意思を示す「遺言廃除」の2つの方法があります。

生前に廃除を確定させたい場合には生前廃除が適しており、死後の手続を遺言執行者に委ねたい場合には遺言廃除が選択されます。いずれの場合も、最終的には家庭裁判所の審判によって廃除の可否が判断されます。

生前廃除の流れ

生前廃除は、被相続人自身が家庭裁判所に申し立てを行うことにより進められます。手続や証拠の整理が重要となるため、不安がある場合には弁護士等の専門家への依頼も検討すべきでしょう。

 

<生前廃除を申し立てる流れ>
・被相続人が生前に家庭裁判所で推定相続人廃除の審判申立書を提出する
・家庭裁判所で相続廃除に関する審判が確定する
・廃除が認められた場合、10日以内に被相続人の本籍地を管轄する市区町村役場に、推定相続人の廃除を届け出る
・対象となる推定相続人の戸籍謄本に相続廃除された旨が記載される

遺言廃除の流れ

遺言廃除は、被相続人が遺言において廃除の意思表示を行い、死後に遺言執行者がその実現のために手続を行うものです。

被相続人の死亡により遺言の効力が生じた後、遺言執行者は遅滞なく家庭裁判所に対して廃除の申立てを行う義務を負います。正当な理由なくこれを怠る場合には、利害関係人は遺言執行者の解任を請求することができます。

 

<相続廃除を申し立てる流れ>
・被相続人が生前に相続廃除について遺言書に記しておく
・被相続人の死亡後、遺言執行者が家庭裁判所に推定相続人廃除の審判申立書を提出する
・家庭裁判所で相続廃除に関する審判が確定する
・廃除が認められた場合、10日以内に被相続人の戸籍を管轄する市区町村役場に推定相続人の廃除を届け出る
・推定相続人の戸籍謄本に相続資格を喪失した旨が記載される

家庭裁判所での審判の流れ

いずれの手続であっても、審判を行うのは被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

手続では、申立人(被相続人または遺言執行者)と相手方(廃除対象となる推定相続人)の双方から事情を聴取するため、原則として審問(裁判官による面談)が実施されます。
その中で、当事者双方が主張および証拠を提出し、裁判所がそれらを総合的に評価した上で、廃除の可否について審判を下します。

廃除を成功させるには証拠と弁護士が必要不可欠

相続廃除は、相続権を剥奪するという極めて強い効果を伴う制度であるため、家庭裁判所において安易に認められるものではありません。
これを認めさせるためには、主張を裏付ける客観的証拠を的確に収集・整理し、法的観点から説得的に構成することが不可欠です。

感情論では通じない!客観的な証拠の準備

裁判所は証拠に基づいて事実認定を行うため、「ひどい扱いを受けた」という抽象的な主張のみでは、廃除は認められません。

例えば、以下のような証拠が重要となります。
 
・診断書や負傷箇所の写真
・警察への相談・被害届の記録
・預貯金の取引履歴(浪費や使い込みの裏付け)
・暴言や脅迫の録音データ
・継続的な問題行動を示す記録(メモ、メール等)
 
このように、虐待・侮辱・著しい非行を具体的に裏付ける証拠の有無が、相続廃除の成否を大きく左右します。

特に遺言廃除の場合には、被相続人の死亡後に証拠収集を行うことが極めて困難となるため、生前の段階で計画的に証拠を確保しておくことが重要です。

京都で相続廃除をご検討の方は山村忠夫弁護士事務所へ

ある行為が「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」に該当するかどうかの判断や、どの証拠が有効であるかの見極めには、高度な法的知識と実務経験が求められます。

相続廃除を実現するためには、単に資料を集めるだけでなく、それらを法的に意味のある形で整理し、裁判所を納得させる主張として構成する必要があります。これを個人で行うことは容易ではありません。
 
また、遺言廃除を確実に実現するためには、遺言書の作成段階から弁護士を関与させ、遺言執行者として指定しておくことが有効です。

京都で相続廃除をご検討の方は、相続案件に豊富な実績を有する当事務所までご相談ください。ご本人の意思を最大限に尊重した適切な遺産承継の実現に向けて、的確にサポートいたします。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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