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2026
10/07

【判例紹介】葬儀費用は誰が払う?遺産から負担する際の注意点と親族間トラブルを防ぐ法的対処法

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葬儀費用を誰が払うのかをめぐっては、身内の不幸で精神的な負担が大きい中、親族間のトラブルに発展するケースが珍しくありません。裁判例の主流は、葬儀を主宰した喪主が負担するという考え方ですが、相続人全員の合意があれば、遺産から支出することも可能です。もっとも、生前の関係性や相続人同士の対立により、十分な話し合いができない場合もあります。トラブルに発展しそうなときは、早めに弁護士へご相談ください。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

葬儀費用のご相談で多いのは、「遺産から出すのが当然だと思っていた」というお言葉です。お気持ちはよく分かるのですが、本文で紹介したとおり、裁判例の主流は喪主負担であり、他の相続人の合意がないまま遺産に手を付けると、かえって返還を求められる側になりかねません。
 
予防策は単純で、支出の前に、費用負担について合意を取っておくこと、領収書と内訳を残しておくことになります。

この記事の監修 :
弁護士 山村真登

遺産相続問題は弁護士へ
相続の弁護士費用相場コラム

葬儀費用は誰が負担する?法律上の原則と基本ルール

身内の不幸という精神的な負担が大きい時期に、葬儀費用を誰が払うかという問題は、深刻な親族間トラブルに発展しがちです。葬儀費用の負担者について法律上の明確な規定はなく、裁判例の判断も分かれていますが、近時の裁判例の主流は、葬儀を主宰した喪主が負担するという考え方です。他方で、相続人全員の合意があれば、遺産から支出することもできます。

原則として葬儀を主宰した喪主が負担する

葬儀費用の負担者を定めた法律上の規定はありませんが、実務上は喪主負担説が有力です。葬儀費用は被相続人の死亡後に生じる債務であるため、被相続人自身の債務(相続債務)ではなく、当然に遺産から支払われるものではないと考えられているからです。その結果、喪主を務めた人だけが多額の負担を背負う形となり、理不尽さを覚える親族も少なくありません。

相続人全員の合意で相続財産から支出する

喪主負担が原則ではあるものの、相続人全員の合意さえあれば、遺産からの支出も認められています。
トラブルを防ぐために、葬儀の規模や費用負担を、事前に関係者間で話し合っておきましょう。また、話し合いで決まった内容を遺産分割協議書に記載しておけば、後々のトラブルも防げます。

兄弟や親族間で分担する際の割合と決め方

親族間で費用の押し付け合いが始まり、深刻な争いへ発展することは珍しくありません。兄弟姉妹など複数人で葬儀費用を分担する場合、法定相続分に応じて分ける方法や、各自の経済状況に配慮して話し合いで決める方法があります。負担割合に画一的な正解がないからこそ、事前の真摯な対話を通じて、全員が納得できる着地点を見出す努力が欠かせません。

過去の判例から読み解く葬儀費用の負担と注意点

裁判例には、葬儀費用を喪主の負担とするもの、相続人全員の負担とするもの、相続財産の負担とするものがあり、画一的な判断が確立しているわけではありません。トラブルに発展させないためにも、裁判例ごとの判断の考え方を把握しておきましょう。

喪主が全額自己負担となった東京地裁の判決

この事案では、被相続人Aの葬儀について、形式上の喪主はAの子(当時22歳)が務めたものの、社会的経験が乏しかったため、Aの兄Xが実質的に葬儀の段取り・準備・火葬場の手配などを行い、葬儀費用384万円を支払いました。Xは、この費用は相続財産に関する費用(民法885条)に当たると主張し、相続人らに対して立替金の支払いを求める訴訟を提起しました。
 
裁判所は、相続財産に関する費用とは、相続財産の管理や清算などに必要な費用をいうところ、死者をとむらう葬式は相続財産の管理・処分行為に当たらないため、葬儀費用はこれに該当しないと判断しました。また、被相続人が生前に自己の葬式に関する債務を負担していたなどの特別な場合を除き、葬儀費用を相続債務とみることも相当ではないとしました。
 
その上で、相続人に葬式を実施する法的義務はなく、相続人以外の者が葬式を行うこともあり得ることから、特段の事情がない限り、葬式を実施した者が費用を負担するのが相当であるとの原則を示し、実質的な喪主と評価できるXが葬儀費用を負担すべきであるとして、Xの請求を認めませんでした
(東京地裁判決昭和61年1月28日)。
 
相続人ではない立場で善意で葬儀を主宰した結果、全額が自己負担となることもあり得ます。「葬儀費用は遺産から精算できる」と思い込んで独断で手続きを進めるのは危険ですので、費用負担の考え方を親族間であらかじめ共有しておきましょう。

無断で遺産を引き出して返還を求められた神戸家裁の審判

この事案では、被相続人Aの妻Y1が、保管していた相続財産である現金を、葬儀費用617万円の一部に充てていました。Aの先妻の子Xに葬儀費用の負担義務がないのであれば、Y1が費消した現金は相続財産に含めて扱う、という点は相続人間に争いがなく、Xが葬儀費用を負担する義務を負うかどうかが争点となりました。
 
家庭裁判所は、葬儀は死者を弔うために遺族等が実施・挙行するものであることから、葬儀費用を相続債務とみるべきではなく、葬儀を自己の責任と計算において手配・挙行した者(原則として喪主)の負担になると判断しました。その結果、Xは葬儀費用を負担する義務を負わず、Y1が支出した現金は相続財産に持ち戻されることになりました(神戸家裁平成11年4月30日審判)。
 
この審判が示すとおり、他の相続人に無断で故人の預貯金や現金を葬儀費用に充てる行為は、後に返還を求められる原因になります。引き出し行為自体が「遺産の使い込み」として深刻な紛争へ発展するリスクもあるため、単独での支出は控えましょう。

遺産分割とは別に各自が負担するとされた福岡高裁の決定

遺産分割審判に対する抗告審において、抗告人が「自分が一人で負担した葬儀費用を、遺産分割の方法において考慮してほしい」と主張した事案です。
 
裁判所は、葬儀費用は特段の事情がない限り共同相続人の負担とするのが相当であるから、遺産分割において考慮されるべきではないと判断しました。その結果、共同相続人が各自の費用で葬儀費用を負担することになりました(福岡高裁昭和40年5月6日決定)。
 
このように、葬儀費用の負担の問題は、遺産分割審判の対象にはならないのが原則です。もっとも、相続人全員が合意すれば、遺産分割調停の中で葬儀費用の精算を併せて取り決めることは可能です。合意ができない場合には、遺産分割とは切り離して、別途当事者間の協議や民事訴訟で解決する必要があることに留意してください。

遺産からの支出が例外的に認められた盛岡家裁の古い審判

被相続人の死亡当時にあった現金5万円を、妻が葬儀費用に充てた事案では、裁判所は、葬儀費用は相続財産に関する費用(民法885条)に含まれると判断しました。
 
相続財産に関する費用はその財産の中から支弁すると規定されているため、葬儀費用に使われた5万円について、相続財産への持ち戻しは不要とされています(盛岡家裁昭和42年4月12日審判)。
 
このように遺産からの支出を認めた裁判例もありますが、現在の裁判例の主流とはいえない立場です。実務上の注意点として、相続人全員の同意なしに遺産へ手をつけることは、親族間対立の火種になるため控る方が望ましいでしょう。

親族間でよくある費用のトラブルと争いの原因

不信感や不公平感から、親族間で葬儀費用のトラブルになるケースは後を絶ちません。争いの原因を理解した上で対処し、納得のいく形で負担を分け合えるようにしましょう。

独断で手配された高額な請求への戸惑いや不満

喪主を務めた相続人が独断で豪華な葬儀を行い、後から内訳の説明もなく高額な費用を一方的に請求してくるケースは少なくありません。また、疎遠だった親族が故人の口座から無断で遺産を引き出し、葬儀代の名目で費消するといった事態に直面すれば、不信感を抱くのは当然です。

立て替えた費用の支払いを拒絶される理不尽なケース

善意で葬儀費用を全額立て替えたのに、いざ精算の段階になって他の相続人から支払いを拒まれる事態も起こり得ます。前記のとおり、裁判例の主流は喪主負担説であるため、事前の合意がなければ、立替分の回収は容易ではありません。
親族間での負担割合について冷静に話し合うためにも、領収書や費用の内訳が記載された書類など、客観的な資料を必ず残しておきましょう。

資金が手元になく費用が払えない場合の対処法

突然の別れで十分な蓄えがなく、支払いに窮する場合も考えられます。なお、香典は、弔問客から喪主への贈与と解されており、遺産には含まれません。まずは香典を葬儀費用に充てるのが通常ですが、それでも足りないときは、法律上認められた預貯金の仮払い制度の利用を検討しましょう。また、被相続人に多額の借金があることが判明した場合は、相続放棄との関係に注意が必要です。
 
親族間でよくある費用のトラブルと争いの原因

預貯金の仮払い制度を活用して手配を進める

遺産分割の成立前でも、各相続人が単独で故人の預貯金口座から一定額を払い戻せる仮払い制度があります(民法909条の2)。払い戻せる金額は、口座ごとに「相続開始時の預貯金残高×3分の1×自己の法定相続分」で計算され、同一の金融機関につき150万円が上限です。複数の金融機関に口座があれば、それぞれの金融機関で利用できます。

葬儀社への相談や支払時期の調整による現実的な回避

仮払い制度の手続きに時間を要し、葬儀までに間に合わない場合も想定されます。現実的な対応として、葬儀社に事情を説明し、支払期日の延期や分割払いを相談することも有効です。クレジットカード決済に対応した葬儀社を選び、引き落とし日までの期間を利用して親族間の協議を進める方法もあります。

借金が多く相続放棄を検討する際の注意点

故人に多額の借金があり、相続放棄を視野に入れている場合、遺産から葬儀費用を支払う際には注意が必要です。遺産からの支出が相続財産の「処分」(民法921条1号)とみなされると、すべての債務を引き継ぐ単純承認が成立してしまうおそれがあるからです。社会通念上相当な範囲の葬儀費用の支出であれば「処分」に当たらないとした裁判例もありますが、相当かどうかの判断は事案によって微妙です。相続放棄の可能性を残しつつ葬儀を執り行うためには、遺産からの支出に着手する前に、相続分野に詳しい弁護士へ相談しておくことが重要です。
 
関連記事:相続放棄を弁護士に依頼すべきケースと費用は?司法書士との違いや専門家に任せるメリットを解説

葬儀費用のトラブルは一人で抱え込まず専門家へ相談を

葬儀費用の支払い負担をめぐって親族とトラブルになっているときは、弁護士への相談をご検討ください。初回の法律相談を無料としている法律事務所も多いため、相談するか迷っている段階でも、まずは気軽に問い合わせてみましょう。

当事者同士の協議が平行線をたどるリスク

まったく聞く耳を持たない親族がいる場合や、無断で引き出された現金を取り戻したい場合、当事者同士で話し合っても合意に至らず、感情的な対立が深まるばかりというケースが少なくありません。そもそも、話し合いの機会すら設けられないこともあります。ご自身だけで解決しようとすると精神的にも消耗しやすいため、中立的な第三者である弁護士の介入を検討するのが得策です。

京都の山村忠夫法律事務所の初回無料相談でスムーズな解決へ

京都およびその近郊で、遺産相続や葬儀費用の精算にお困りの際は、相続案件の実績豊富な山村忠夫法律事務所へご相談ください。法律の専門家として、法的根拠と裁判例を踏まえ、適正な遺産分割と円満なトラブル解決に向けてサポートいたします。
 
親族間の関係が修復困難になる前に、まずは当事務所の初回無料相談をご活用ください。無料相談のご予約は、公式ウェブサイトの専用フォームまたはお電話から受け付けております。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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