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2026
10/07

生前贈与の持ち戻し期間は何年? 相続税申告と遺産分割手続きの場面における違いを解説

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生前贈与の持ち戻しは、相続税、遺産分割、遺留分侵害額請求など、場面によって対象となる期間や範囲が異なります。特に相続税では、持ち戻し(生前贈与加算)の期間が3年から7年に延長され、経過措置期間中の計算は複雑です。一方、遺産分割では、特別受益に当たる生前贈与は原則として何年前のものでも持ち戻しの対象となりますが、遺留分侵害額請求では、贈与を受けた人が相続人かどうかによって、基礎財産に算入される期間が異なります。生前贈与がある場合は、相続手続き全体への影響を踏まえ、弁護士に相談することをお勧めします。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

ご相談の場で、「贈与から3年経っているから、遺産分割でも兄への贈与は計算に入れられないと言われた」というお話を伺うことがあります。これは典型的な混同です。3年(現在は7年へ移行中)というのは相続税の申告における加算のルールであり、遺産分割はまったく別です。遺産分割では、特別受益に当たる贈与であれば、10年前でも20年前でも持ち戻しの対象になり得ます。

税金の話か、遺産の分け方の話か。この二つを区別するだけで、ご自身の問題は見通しがよくなります。本コラムがその整理の一助になれば幸いです。そのうえで判断に迷われたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

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過去何年分の生前贈与が持ち戻しの対象?相続税と遺産分割での違い

生前贈与と聞くと、「いつ行った贈与でも同じように扱われる」と思われがちです。しかし実際には、相続税申告の場面と遺産分割の場面とでは、考慮される生前贈与の対象期間が大きく異なります。以下では、それぞれの場面で対象となり得る生前贈与について解説します。

相続税における持ち戻し期間は3年から7年へ延長

相続税とは、亡くなった親や配偶者などから金銭や不動産などの財産を相続した場合に、その財産に課される税金です。つまり、相続税の対象となる財産は、原則として被相続人の死亡時における財産です。しかし、死亡時の財産だけを課税対象とすると、亡くなる直前に贈与によって財産を移し、相続税の課税を免れることが可能になってしまいます。そこで、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は相続財産に加算するというルールが設けられています。これが、相続税における「持ち戻し」(税法上は「生前贈与加算」と呼ばれます)です。
 
従来、この加算対象期間は「相続開始前3年以内」とされていました。贈与から3年以内に贈与者が亡くなった場合、その贈与財産は、贈与税の基礎控除(年間110万円)以下で贈与税がかからなかった部分も含めて、相続税の課税価格に加算されます。そして、令和5年度税制改正(2023年)により、この加算対象期間は「7年」に延長されました(2024年1月1日以後に受けた贈与から段階的に適用されます)。なお、延長された4年間(相続開始前3年超7年以内)に受けた贈与については、総額100万円までは加算の対象外とされています。
 
ここで説明したのは、暦年課税による贈与の取り扱いです。相続時精算課税を選択した場合には、贈与の時期にかかわらず、選択後の贈与財産(2024年以降の贈与については毎年110万円の基礎控除部分を除く)が相続財産に加算される点に注意してください。

遺産分割・遺留分で考慮される生前贈与の期間

相続人の中に、被相続人から遺贈を受けた者や、婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本として生前贈与を受けた者がいる場合、その相続人が得た利益を「特別受益」と呼びます。そして、特別受益がある場合に、相続分の前渡しと同視できる贈与等を考慮して具体的相続分を算出し、遺産の公平な分配を図る仕組みが、特別受益の持ち戻しの制度です(民法903条1項)。簡単に言えば、特別受益を受けた相続人の取り分を減らし、他の相続人の取り分を増やすことで、相続人間の公平を図る制度です。
 
特別受益の価額を遺産に加算して、計算上の遺産総額(みなし相続財産)を算出する処理は「持ち戻し」と呼ばれます。生前に財産を受け取った相続人が、他の相続人よりも有利な立場にならないようにするための処理です。そして、遺産分割における生前贈与は、特別受益に該当する限り、相続税の場合と異なり、原則として何年前のものでも持ち戻しの対象となります。
 
ただし、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として、特別受益や寄与分を考慮した具体的相続分を主張できなくなりました(民法904条の3)。10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割の調停・審判を申し立てた場合などの例外はありますが、古い相続ほど注意が必要です。
 
他方で、遺留分(相続人に最低限保障された遺産の取り分)の算定については、基礎となる財産に算入される生前贈与の範囲が限定されています。すなわち、相続人以外の者への贈与は原則として相続開始前1年以内のもの、相続人への贈与は原則として相続開始前10年以内の特別受益に該当する贈与に限られます。ただし、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与は、期間の制限なく算入されます。
 
関連記事:遺産分割で生前贈与が特別受益となる典型例と否定例は?持ち戻しの免除などの注意点についても合わせて解説
遺留分侵害額請求とは?遺留分制度や対象となる財産、計算方法、請求手順や注意点などを分かりやすく解説

遺留分算定と遺留分侵害額の計算式における10年制限の落とし穴

遺留分を算定するための基礎財産に算入できる相続人への生前贈与は、上記のとおり、原則として相続開始前10年以内のものに限られます。しかし、遺留分権利者自身が受けた特別受益を遺留分侵害額から控除する場面(民法1046条2項1号)では、この10年の期間制限は及ばないと解されています。つまり、10年より前に受けた特別受益であっても、遺留分侵害額の計算上は控除の対象となり得るのです。
 
このように、生前贈与に関する期間のルールは、相続税・遺産分割・遺留分という場面ごとに異なり、非常に複雑で、判断を誤りやすい分野です。正確な遺留分侵害額の算定が必要な場合には、相続案件の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

2026年現在のリアルな計算基準と孫への生前贈与の扱い

相続税申告における生前贈与の加算対象期間は、段階的に従来の3年から7年へと延長され、この移行期の特例的な取り扱いを経過措置と呼びます。具体的な経過措置は、以下の表のとおりです。
 
段階的な移行期間で相続が発生した場合の計算目安や、孫・甥・姪といった法定相続人以外の生前贈与の持ち戻しについて確認しましょう。

 

被相続人の相続開始日 加算対象期間
~2026年12月31日 相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)
2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から死亡の日までの間
2031年1月1日~ 相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

 

経過措置期間である2026年に相続が発生した場合はどうなる?

2026年12月31日までに発生した相続では、従来どおり、相続開始前3年以内の贈与が加算対象となります。2027年1月1日から2030年12月31日までに発生した相続では、加算対象期間が段階的に延び、2024年1月1日以降に行われた贈与が順次含まれるようになります。そして、2031年1月1日以降に発生する相続からは、相続開始前7年以内の生前贈与のすべてが加算対象となる「7年ルール」へ完全に移行します。
 
仮に、2029年1月1日に相続が開始した場合、加算対象となるのは、2024年1月1日から相続開始時までの5年間に受けた贈与です。

孫や法定相続人以外への生前贈与に関する法的解釈の違い

孫や甥・姪といった相続人以外の者への生前贈与は、相続人への贈与とは、税務上も遺産分割上も取り扱いが異なります。
 
前提として、贈与税・相続税対策として孫や甥・姪への暦年贈与を検討する際は、基本的なルールを押さえておきましょう。暦年課税における贈与税の基礎控除(年間110万円)の判定基準となるのは、「あげる人(贈与者)」ではなく「もらう人(受贈者)」です。受贈者が1年間(1月1日〜12月31日)に受け取った贈与財産の合計額が110万円以下かどうかで判定されるため、同一年内に複数の贈与者からそれぞれ110万円未満の贈与を受けた場合でも、その合計額が110万円を超えていれば、超えた部分に贈与税が課されます。
 
2026年現在のリアルな計算基準と孫への生前贈与の扱い

税務上は原則として加算の対象外となる

相続人ではない孫や甥・姪への生前贈与は、原則として相続税の生前贈与加算の対象外です。加算の対象となるのは、相続または遺贈により財産を取得した者(相続人・受遺者のほか、生命保険金などのみなし相続財産を受け取った者を含む)への贈与に限られるためです。
 
逆に言えば、孫であっても、遺言により遺贈を受けた場合、生命保険金の受取人となっている場合、代襲相続人である場合などには、加算の対象となる点に注意が必要です。なお、税法上の「みなし相続財産」とは、生命保険金や死亡退職金など、民法上の遺産分割の対象には含まれないものの、相続税の課税対象とされる財産をいいます。

遺産分割では実質的な親への贈与として争点になりやすい

祖父母から孫への贈与は、原則として「特別受益」には該当しません。特別受益は、共同相続人間の公平を図るため、相続人が被相続人から受けた特別な利益を相続分の計算上考慮する制度であり、その対象は「相続人」に限られるところ、孫は、代襲相続が発生した場合や養子縁組をした場合を除き、相続人ではないからです。
 
もっとも、孫への贈与であっても、親である相続人が負担すべき扶養を被相続人が代わって行ったものであるなど、実質的に親である相続人が利益を受けたと評価できる特別な事情がある場合には、親への贈与として特別受益に該当する可能性があります。他方、孫に対する通常の養育費・学費など扶養義務の範囲内の負担や、相続人が単に間接的な利益を受けたにとどまる場合は、原則として特別受益には当たりません。孫への生前贈与が実質的な親への贈与といえるか否かは、贈与の経緯、金額・価値、性質、趣旨、扶養義務との関係、相続財産の前渡しと評価できるかなどを踏まえて、個別に判断されます。

親族間で泥沼化しやすい生前贈与のトラブル事例

相続財産が多いほど、過去の生前贈与の持ち戻し計算を巡って、親族間の争いが激化しやすくなります。トラブルになりやすいケースをあらかじめ把握して、争いを未然に防ぎましょう。

不動産贈与や多額の住宅取得資金の援助が発覚した局面

土地や建物が生前贈与されていた場合や、購入資金の援助があった場合には、財産評価を巡って複雑な争いが生じます。特別受益における不動産の評価は、贈与を受けた当時の価額ではなく、相続開始時の価額を基準に行うのが原則です。
 
そのため、不動産価格が上昇している経済環境の下では、数十年前の贈与が、譲り受けた当時の価値を遥かに上回る金額で持ち戻し計算されることになります。その結果、予想外の取り分の減少に直面した相続人との間で、激しい対立に発展しかねません。

過去の預金引き出しや特定の親族への使途不明金が疑われる状況

親の死後に通帳から多額の資金移動が見つかり、特定の相続人への生前贈与や使い込みが疑われるケースは少なくありません。「勝手に引き出しただろう」「生前贈与を隠しているはずだ」と追及する相続人に対し、通帳を管理していた相続人が「親から頼まれて引き出しただけだ」「引き出したお金は親の生活費や介護費に使った」と反論する、という構図が典型です。
 
この場合、出金当時の親に財産管理を任せられるだけの判断能力がなかった事実、たとえば認知症と診断されていた事実があれば、仮に引き出しの委任を受けていたとしても、その委任自体が無効と判断される可能性が高くなります。そのため、預金の使い込みが疑われる場合には、被相続人の判断能力・意思能力の有無を立証するための証拠(医療記録や介護記録など)を集めることが有効です。また、生活費や介護費に使ったという主張に対しては、領収書や明細書等の裏付けを求めることが有効です。
 
なお、使途不明金の問題は、相続人間で「遺産に持ち戻したうえで分割する」という合意に達しない限り、家庭裁判所の遺産分割調停で解決することはできません。調停で解決できない場合の最終的な手段が、不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求の民事訴訟です。これらの訴訟では、出金権限の有無を巡る主張・立証が専門的かつ技術的になるため、弁護士に依頼して進めることをお勧めします。

生前贈与の持ち戻しを回避する免除の意思表示と客観的証拠の確保

過去の贈与を理由として、相続における遺産の取り分を大幅に減額されそうになっている場合、まずは、当該援助がそもそも扶養義務の範囲内であり、特別受益に該当しないという反論が考えられます。これに加えて、仮に特別受益に該当するとしても、「持ち戻し免除の意思表示」があったことを主張することで、相手方からの減額要求に反論できる可能性があります。
具体的には、被相続人である親が、生前に贈与した財産について「返さなくてよい」「相続のときに遺産に加算しなくてよい」などの意思を示していた事実があれば、それは持ち戻し免除の意思表示に当たる可能性があります。

特別受益の持ち戻し免除の意思表示を活用する

特別受益の持ち戻し免除の意思表示とは、特別受益に当たる贈与を遺産分割の計算上持ち戻さなくてよいとする、被相続人の意思表示をいいます(民法903条3項)。方式に定めはなく、明示のほか黙示によることも可能です。
 
明示の意思表示とは、遺言書や贈与契約書の条項に免除の意思が明記されている場合です。一方、黙示の意思表示とは、贈与の経緯や当時の状況などから、被相続人の免除の意思が推認される場合を指します。黙示の認定は法的な争いに発展しやすいため、状況に応じた慎重な検討が欠かせません。
 

<黙示の意思表示と判断されやすいケース>
・贈与の見返りとして、相続人が被相続人の介護や看護をしている
・病気や経済的困窮により、自立した生計を営めない状態にある

 

なお、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が、配偶者に対して居住用の建物またはその敷地を遺贈・贈与した場合には、黙示の意思表示の認定を待つまでもなく、持ち戻し免除の意思表示があったものと法律上推定されます(民法903条4項)。
 
関連記事:特別受益の持ち戻し免除とは?特別受益を主張されたときの対応や持ち戻し免除が認められるケースと注意点

親族からの過剰な減額請求を防ぐ客観的な証拠の収集

遺言書や贈与契約書に持ち戻し免除に関する記載がない場合に、黙示の持ち戻し免除の意思表示を認めてもらうことは容易ではありません。黙示の意思表示の有無は、個別の事案における諸事情を総合的に考慮し、被相続人が持ち戻しを免除する意思を有していたか否かを推認して判断されます。具体的には、贈与の経緯、被相続人の生活状況、被相続人と受益者との関係性その他の事情を踏まえて、被相続人の意思を認定することになります。
 
例えば、受益者が贈与を受ける一方で、被相続人の介護や看病に継続的に尽力していたなど、贈与と介護・看病との間に一定の関連性が認められる場合には、被相続人がそのような貢献を考慮して贈与をしたものとして、持ち戻し免除の意思が認められやすくなると考えられます。また、重い病気等により独立して生計を営むことが困難な相続人に対し、その生活を支援する目的で贈与がされた場合にも、当該贈与を遺産分割において持ち戻すことを予定していなかったとの被相続人の意思を推認させる有力な事情となり得ます。
 
これらの事情を裏付ける証拠としては、贈与当時の手紙や日記、預貯金口座の取引履歴・振込記録、介護の実態を示す記録などが考えられます。相続開始から時間が経つほど、こうした証拠を探し出すことは困難になります。そのため、相続が開始したら早期に証拠収集に着手すること、さらに言えば、贈与を受けた時点で証拠を残しておくことが重要です。

生前贈与の持ち戻しを巡る親族間の対立は山村忠夫法律事務所に相談を

税務署への相続税申告は税理士が担う職務領域ですが、遺産分割手続きにおいて生前贈与の持ち戻しを巡り親族間で主張が対立した際の対応は、弁護士が担う領域です。
 
遺産相続における生前贈与の持ち戻しでトラブルになったときは、山村忠夫法律事務所にご相談ください。当事務所では、相続案件の実績豊富な弁護士が、あなたの正当な権利を守るためにサポートいたします。

当事者同士の話し合いは修復できないほど関係性悪化のリスクも

「過去の通帳を見せろ」「私の方が介護で苦労した」といった直接的な感情のぶつかり合いにより、親族関係が修復困難なほど壊れてしまうだけでなく、紛争が長期化するおそれもあります。
 
利害関係のない第三者である弁護士が代理人として交渉の窓口に立つことで、お互いに冷静さを取り戻し、建設的な話し合いを進められる可能性が高まります。

妥当な解決を目指すなら、京都の相続トラブルに強い山村忠夫法律事務所へ

京都およびその近郊で、遺産相続や特別受益の持ち戻しを巡るトラブルにお悩みの方は、地域の実情と相続法務に精通した山村忠夫法律事務所へご相談ください。客観的な証拠の収集を含め、依頼者の正当な利益を守るため、冷静に交渉を進めます。初回の無料相談は、お問い合わせフォームまたはお電話でご予約いただけます。お一人で悩みを抱え込まず、まずはお気軽にご連絡ください。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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