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2025
02/01

遺産分割で訴訟になるケースとは?相続人の確定や遺産の範囲など具体的な事例で分かりやすく解説

遺産分割でトラブルになった場合は、まず遺産分割調停・審判による解決を目指しましょう。しかし、遺言書の有効性や遺留分など、遺産分割の前提となる部分で争いがある場合は、遺産分割協議の前に訴訟が必要となるケースがあります。訴訟の結果は相続分に大きな影響を与えるため、訴訟が必要なケースや手続き、訴訟を有利に進める方法を事前に確認しておく必要があるのです。弁護士に相談するメリットとして、手続きのサポートや、法律に基づいた主張を行える点にも注目して記事をご確認ください。

この記事の監修者

弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク州弁護士

2013年12月
弁護士登録 山村忠夫法律事務所勤務開始
2018年5月
ニューヨーク大学ロースクール(New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州))LL.M修了
2019年10月
ニューヨーク州弁護士登録

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弁護士 山村真登
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弁護士 山村真登

遺産分割におけるトラブルは、家族間の感情や経済的利益が絡み合うため、解決が難航することが多々あります。調停や審判といった家庭裁判所の手続きではなく、紛争の内容によっては民事訴訟が必要となるケースもあります。
本コラムでは民事訴訟が必要となる事例をご紹介します。相続問題でお悩みの際は、適切な手続きを選択するためにも弁護士への相談をご検討ください。

この記事の監修 :
弁護士 山村真登

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相続の弁護士費用相場コラム

遺産分割で訴訟になるケースとは?

遺言書のない相続では、相続人による遺産分割協議にて全員の合意を得て相続方法が決まります。
しかし、感情的な対立や各相続人の事情が複雑に絡み合い、協議が難航するケースも少なくありません。そのような、話し合いでの解決が難しいときに選択肢となるのが、遺産分割調停です。ただし、どのような紛争でも遺産分割調停で解決できる訳ではなく、トラブル内容によって取るべき手段は異なってきます。

遺産分割自体は訴訟で解決できない、解決の流れ

遺産分割は、相続人が亡くなった方の財産をどのように分けるかを決める手続きです。しかし、この遺産分割は訴訟では解決できません。
相続は家族や親族間で行われることが多く、関係性を考慮して話し合いで解決することが求められるからです。遺産分割は、以下のような流れで進められます。
 

<遺産分割協議から相続手続きまでの流れ>
1.遺産分割協議:相続人全員が集まり、遺産の分け方について話し合います。
2.(協議不成立時)遺産分割調停:協議がまとまらない場合、家庭裁判所で調停を行います。
3.(調停不成立時)遺産分割審判:調停が不調に終わった場合、裁判官が遺産の分け方を決める審判に移行します。
4.協議や調停・審判に基づいた相続手続きへ

まずは遺産分割協議で相続についての話し合いへ

遺産分割協議は、相続人全員の意見が一致して初めて成立します。つまり、一人でも反対すれば、協議はまとまらず、遺産の分割は決まりません。 遺産分割協議には期限が定められていないため、話し合いを続ける選択肢もあります。

遺産分割協議でまとまらない場合は遺産分割調停へ

遺産分割協議は、相続人同士の感情が複雑に絡み合うこともあり、当事者間だけで解決するのは難しい場合も多いでしょう。
そのような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が中立的な立場から、相続人同士の話し合いをサポートします。調停で相続人全員が合意すれば、合意内容で遺産分割が確定するのです。

調停でも合意に至らなかった場合は遺産分割審判へ

調停で合意に至らなかった場合、自動的に遺産分割審判へと進みます。審判では、裁判官が各相続人の主張を聞き、最終的な遺産の分け方を決定します。審判の内容に不満がある場合でも、不服申し立てはできますが、新たな訴訟は起こせません。
遺産分割は、相続人全員にとって納得のいく形での解決が大切です。まずは話し合いによる解決を目指し、難しい場合は調停や審判といった制度を活用しましょう。 

遺産分割で訴訟になる2つのケース

遺産分割の方法については訴訟が認められていませんが、以下の2つのケースで話し合いによる解決が難しい場合は、調停・審判ではなく訴訟で解決を目指します。
 

<遺産分割で訴訟が必要になる2つのケース>
・遺産分割の前提となる部分:遺言書が有効か、誰が相続人かなど、遺産分割を行う前の段階で争いがある場合
・遺産分割以外の部分:すでに決まった遺産分割を取り消したいなど、遺産分割そのものではないが、関連する部分で争いがある場合

遺産分割の前提って?何が争われるの?

遺産分割の前提とは、相続財産がいくらあるのか、誰が相続人になるのかといった、相続の土台となる事実のことです。
この前提がはっきりしないと、遺産をどのように分けるか具体的な話ができないため、遺産分割協議の前に解決しなければなりません。話し合いで解決が難しいときは、訴訟にて解決を目指します。
遺産分割の前提については、以下の3つの点で争いが起こりやすいです。
 

<遺産分割の前提問題>
・相続人確定の争い
・遺産の範囲に関する争い
・遺言書の有効性

相続人確定の争い

離婚や再婚、養子縁組など、家族関係が複雑になると、思わぬ人が相続人として現れる可能性があります。予期せぬ相続人が「自分にも相続権がある」と主張する可能性は十分考えられるでしょう。
そうしたケースで、相続権の有無を問う訴訟が「相続人の地位不存在確認訴訟」です。これは、相続権を主張する人が本当に相続人かどうかを法的に確定したいときに申し立てます。

遺産の範囲に関する争い

遺産分割協議の前には、相続財産を確定する必要があります。遺産の使い込みや隠し財産で遺産の範囲が疑わしいときも、訴訟での解決が可能です。
たとえば、一部の相続人によって相続財産が使い込まれている疑いがある・財産隠しが疑われる・相続人が別人の名義で財産を所有しているときなどです。このときに行う訴訟が「遺産確認訴訟」です。他にも「所有権確認訴訟」といった形式となることもあります。
また、相続財産を不正に使い込んだ人物に対して、その財産を返還させたい場合は「不当利得返還請求訴訟」を、金銭賠償の申し立てをしたい場合は「損害賠償請求訴訟」ができます。

遺言書の有効性

遺言書のある相続は遺言書が優先されます。
しかし、あまりに内容が不公平な遺言であれば、無効を主張できます。とはいえ、偏った内容であっても、内容を理由とした無効は主張できません。
こうしたケースでは、遺言書の形式不備や、遺言者に認知症・脅迫などの遺言能力がなかったなどの理由で、遺言書の有効性を争うことがあります。
遺言書が有効かどうかを訴訟で争うときは「遺言無効確認訴訟」を起こします。

その他の訴訟が必要となるケースとは?

遺産分割そのものではなく、遺産分割に関連する別の問題で裁判が必要になるケースがあります。訴訟の具体的内容は千差万別ですが代表的な例として、以下の2つをご紹介します。
 

<その他訴訟が必要となるケースの例>
・遺産分割協議の取り消し・無効
・遺留分侵害額請求訴訟

遺産分割協議の取り消し・無効

一度決まった遺産分割の内容でも、後から問題が判明した場合、「遺産分割協議無効確認訴訟」という裁判を起こして認められると、その効力をなくせます。
例えば、脅迫やだまされるなど不利な条件で合意させられた・相続人全員が同意していなかった・認知症などで判断能力がなかった人が協議に参加していたといったケースでは、裁判を通じて、遺産分割協議が無効だと認められる可能性があります。
 
遺産分割協議が無効になれば、協議のやり直しも可能です。ただし、裁判を起こす前に、まずは他の相続人と話し合って解決できるよう努めましょう。 話し合いがまとまらない場合に、訴訟を起こす流れになります。

遺留分侵害額請求訴訟

一部の相続人には、生活を守るために最低限受け取る権利(遺留分)が法律で定められています。遺産分割の結果、この遺留分を侵害されたと感じた場合は、遺留分侵害額請求という手続きを行えます。これは、遺留分を侵害した相手に対して、不足している分の金銭を請求するものです。
遺留分を侵害されたと感じた場合は、まず相手方に直接請求し、話し合いで解決を目指しましょう。 話し合いがまとまらない場合は、調停を申し立て、調停でも解決できない場合には、訴訟に発展します。

遺産分割の訴訟を有利に進めるためのポイントは?

話し合いによる解決を目指す調停とは異なり、訴訟は当事者の主張や客観的な証拠で判決が確定します。準備が整わないまま訴訟に臨むと主張が認められず、不利な判決になる恐れもあるでしょう。
訴訟を有利に進めるためには、証拠集めや弁護士のサポートが重要になります。

訴訟に必要な準備や証拠集めを入念にする

訴訟を有利に進めるためには、第三者があなたの主張を信じるための客観的な資料・証拠が必要です。

たとえば、お金を使いこんだと主張する場合、銀行の通帳や取引明細書、遺言書が無効だと主張する場合は、筆跡鑑定の結果や遺言書作成時の医師の診断書などが証拠として考えられます。
どんな証拠が必要かは、ケースによって異なります。 弁護士と相談しながら、しっかりと準備を進めましょう。

弁護士のサポートを受ける

訴訟では、過去の裁判例の参照や証拠の評価、要件事実の検討等、専門的な知識が必要といえます。
また、訴訟の手続きには専門的な知識と経験を要するだけではなく、精神的な負担も大きいです。弁護士に代理人として活動してもらうことにメリットはあるといえるでしょう。
ただし、事案によっては弁護士費用が高額になる恐れもあるため、事前にいくらかかるか確認し、コストとのバランスも考慮して検討するとよいでしょう。

遺産分割訴訟はどこで起こす?

遺産分割に関する裁判を起こす場合、家庭裁判所ではなく、地方裁判所か簡易裁判所になります。遺産分割調停は、家庭裁判所で手続きを進めますが、訴訟は、より民事訴訟法の手続の中で審理を行うため、地方裁判所や簡易裁判所で手続きを進めます。遺産分割調停とは申し立て先が異なりますし、適用される訴訟法も異なります。

遺産分割訴訟を申し立てる裁判所

遺産分割訴訟の申し立ては、基本的に以下のいずれかとなります。
 

<遺産分割訴訟を申し立てできる裁判所>
・相手方の住所地を管轄する地方裁判所:相手方が住んでいる場所を管轄する裁判所
・被相続人の相続開始時の住所を管轄する地方裁判所:亡くなった方の最後の住所地を管轄する裁判所
・双方で合意した地方裁判所:原告と被告が話し合って決めた裁判所

 
相手方によっては遠方の裁判所になるケースもあるので、注意が必要です。また、訴訟の種類や状況によって異なるケースもあるので、事前に確認するようにしましょう。

京都府内の管轄裁判所一覧

京都府内の地方裁判所は以下のとおりです。
 

<京都府内地方裁判所一覧>

裁判所名 所在地
京都地方裁判所
京都簡易裁判所
京都市中京区菊屋町(丸太町通柳馬場東入ル)
京都地方裁判所
園部支部
園部簡易裁判所
京都府南丹市園部町小桜町30
京都地方裁判所
宮津支部
宮津簡易裁判所
京都府宮津市字島崎2043-1
京都地方裁判所
舞鶴支部
舞鶴簡易裁判所
京都府舞鶴市字南田辺小字南裏町149
京都地方裁判所
福知山支部
福知山簡易裁判所
京都府福知山市字内記9
伏見簡易裁判所 京都市伏見区桃山町泰長老
右京簡易裁判所 京都市右京区太秦蜂岡町29
向日町簡易裁判所 京都府向日市鶏冠井町西金村5-2
木津簡易裁判所 京都府木津川市木津南垣外110
宇治簡易裁判所 京都府宇治市宇治琵琶33-3
亀岡簡易裁判所 京都府亀岡市安町野々神31-10
京丹後簡易裁判所 京都府京丹後市峰山町杉谷288-2

 

参考:「京都地方裁判所 管内の裁判所所在地一覧」/裁判所

遺産分割でトラブルになったら弁護士に相談を

遺産分割をめぐってトラブルが発生した場合、相続人同士の感情的な対立や、遺産の分け方に対する意見の相違などから、裁判が長期化するケースも少なくありません。
裁判が長引けば、費用や時間もかかりますし、精神的な負担も大きくなってしまいます。
安易に訴訟を起こすのではなく、訴訟にかかる費用や時間、そして精神的な負担と、相続トラブル解決によるメリットを比較検討し、慎重に判断する必要があるのです。
訴訟が必要かどうか判断に迷う場合や、訴訟に関するサポートが必要な場合は、弁護士への相談をお勧めします。
 

弁護士は、相続問題に関する専門家として、法的知識や豊富な経験に基づき、依頼者に最適な解決方法を提案し、手続きをサポートしてくれるでしょう。

弁護士に相談すべき理由

  • ・相手方との交渉や調停・審判の代理人となってもらえる
  • ・トラブルになりそうな可能性を察知し、事前に対策が打てる
  • ・有利な結果を獲得しやすい
  • ・特別受益額や持ち戻し請求の計算を正しく行ってもらえる
  • ・遺留分侵害額請求を行う場合は、資料作成から提出まで対応してもらえる
  • ・面倒な法的手続きを全て任せることができる

他の相続人が特別受益を認めない場合は、トラブルになる前に弁護士に相談するようにしましょう。

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